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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


マイクル・コナリー『ダーク・アワーズ(上)』(講談社文庫)

 マイクル・コナリーの『ダーク・アワーズ』をとりあえず上巻まで読む。深夜勤務の刑事レネイ・バラードと元ロス市警刑事にして、今は私立探偵となったハリー・ボッシュの共演作である。

 コナリー作品の邦訳としては、おそらくこれが三十六作目。そのほとんどが上下巻だから本棚には七十冊近くのコナリー作品が並んでいる。よくこれだけ続いているなと感心するばかりだが、飽きずに読むほうも読むほうである。ハードボイルド路線とキャラャラクターの魅力で読ませるボッシュもの、ストーリーやどんでん返し等の派手な面白さで読ませるリンカーン弁護士ものなど、多彩なシリーズが揃っているおかげだろうが、最近はそれらがすべて一つの世界観に集約され、読者としては面白いと思うと同時に、商売っ気もちらほら感じてしまうし、マンネリ化の加速も危惧するところは否めない。
 本作の主人公レネイ・バラードもそんなコナリー・ワールドのテコ入れ(?)のために登場した印象が強いけれど、早いものでもう四作目。全体的な展開としてはボッシュの後継者という存在になりそうな気配だが、彼女がいずれはボッシュの娘、マディとも絡んできそうで、そういうことを考えてしまっている時点で著者の思うツボなのだろう(苦笑)。

 ダーク・アワーズ(上)

 さて『ダーク・アワーズ』だが、今回はバラードがレイプ事件と年越しの夜に起こった殺人事件の両方を追うというストーリー。殺人事件では、現場で見つかった薬莢が十年前の未解決事件に使われた銃と同じものだったことが判明、その当時の担当者がボッシュだということで、再び二人が共同戦線を……という展開である。
 まあ、いつもどおり安定の書きっぷりだが、ベテランの燃え尽きた女性警官の描写が印象的で、彼女に対するバラードの怒りが昔のボッシュをやや思い出させる。ただ、ボッシュに比べるとまだまだ甘いもので、こういうところが最近のコナリー作品の甘さなのかもしれない。
 詳しい感想は下巻読了時に。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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