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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


クリスチアナ・ブランド『濃霧は危険』(国書刊行会)

 本日は国書刊行会の〈奇想天外の本棚〉から一冊。ものはクリスチアナ・ブランドのジュブナイル、『濃霧は危険』である。
 ブランドのジュヴナイルというと「マチルダばあや」シリーズがすべてかと思っていたら、こういう単発作品も残っていたようだ。

 濃霧は危険

 こんな話。舞台はイギリス南部のダートムア。いいところのお坊ちゃんであるビル・レデヴン少年は同年代の少女がいる知人宅で休暇を過ごすよう親に言われ、しぶしぶロールスロイスに乗せられてしまう。ところが霧深い荒地で突如、運転手が豹変。ビル少年を置き去りして去っていってしまう。
 残されたビル少年は荒地を彷徨い、ようやく出会った双子の兄妹に助けられるが、その少し前のこと。近くにある少年刑務所では、通称〈ナイフ〉と呼ばれる少年が脱走に成功していた……。

 ひと言でいえば、王道の少年少女向け冒険小説。過保護に育てられた主人公ビルが、冒険を通して成長する姿が描かれている。シャム猫サンタも含めてイキイキとした登場人物たち、出入りの多いストーリー、中盤を引っ張る魅力的な謎など、およそジュヴナイルに必要な要素は十分に詰め込まれている。少々クセのあるブランドの語り口もいいスパイスだ。
 ミステリ的趣向としては、メインの暗号はもちろんだが、他にも一つ面白い趣向があるなどサービスも上々。トータルでは大人も含め、誰が読んでも楽しめる一作といえるだろう。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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