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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ゾラン・ジヴコヴィッチ『12人の蒐集家/ティーショップ』(東京創元社)

 セルビアの幻想文学系作家、ゾラン・ジヴコヴィチの『12人の蒐集家/ティーショップ』を読む。連作短篇集の「12人の蒐集家」と中篇「ティーショップ」のカップリングである。
 本書については、しばらく前に読んだ『図書館』が面白かったので取り寄せたのだが、考えると『12人の蒐集家/ティーショップ』の方が全然早く出ているので(2015年だからもう八年前になる)、これを当時見落としていたのは不覚であった。まあ、さらにその五年前の2010年に黒田藩プレスから『ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語』が出ているのだけれど(苦笑)。こちらも早く買っておかないとなあ。

 12人の蒐集家/ティーショップ

 「12人の蒐集家」は蒐集家をテーマにした連作短篇集で、タイトルどおり12人の蒐集家が順番に登場する。その蒐集対象が奇妙なものばかりで、そんな蒐集家の変人ぶりを楽しむ……。
 ……と言いたいところだが、まあそういう話もあるけれど、それよりも面白いのは蒐集家と取引する人物とのやり取り。言い換えると蒐集家と蒐集される者のやり取りが面白いのである。さらにいうと蒐集される側から描いた物語の方がより面白い。そこには著者のシニカルな視点があるのだが、それを上回るユーモラスな語り口、意外なほどカラッとした明るさがある。『図書館』でも感じたことだが、ブラックなのに口当たりがよいという、なかなかレアなタイプの作家である。
 なお、各短篇はどれから読んでも問題ないが、ラストの「コレクションズ」だけは最後に読まれる方がよいだろう。

 「ティーショップ」は旅行中の婦人が主人公。乗り換えまでの待ち時間が二時間もあるため、駅前のティーショップで時間を潰そうとする。するとメニューには何やら見慣れない名前のお茶ばかり。彼女はその中から「物語のお茶」を注文するが……。
 ゾランさん流の『千夜一夜物語』か、短いけれど。趣向が面白いし、読んだ後にほっこりできる傑作。こういうのを読まされると、当初のシニカルとか奇妙な味とかのイメージは微妙に違うんではないかと思えてくる。まあ、どちらにしてもいい作家であることは間違いないので、盛林堂ミステリアス文庫の《ゾラン・ジヴコヴィチ ファンタスチカ》にも期待したいところである。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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