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マレー・ラインスター『地の果てから来た怪物』(創元SF文庫)
SFミステリ読破計画を一つ進める。ものはマレー・ラインスターの『地の果てから来た怪物』。Twitterでよしだまさしさんからお勧めいただいたもの。
こんな話。アメリカ合衆国と南極を中継する基地になっている絶海の孤島「ガウ島」。今まさに乗員九人を乗せた輸送機が、合衆国へ向かう途中にガウ島へ立ち寄るところであった。ところが着陸を目前にして機内で怪事件が勃発。輸送機は胴体着陸したが、そこには着陸直後に自殺を図ったと思われる機長の死体があるだけで、他の乗員の姿は見えなかった。いったい機内で何が起こったのか? 調査を進める中継基地の隊員たちだったが、原因は不明であった。しかし、奇怪な事件はそれで終わらなかった。機長の死体が何者かの手によって運びさられてしまったのだ……。

いやあ、これはこれは。実にオーソドックスなモンスター小説ではないですか。
孤島の基地という閉ざされた空間、謎の連続殺人、見えないモンスター、そして知力を尽くしてモンスターと対峙する人間、さらには極限状態での人間ドラマというお膳立ては、この手の作品のお約束とはいえ、サスペンスをいやが上にも盛り上げる。古い作品なので構成そのものはシンプルながら、一気に惹き込まれた。
それらの設定はジョン・W・キャンベルの短篇「影が行く」を思い出させ、間違いなくその系譜に連なる作品といえるだろう。だが、後輩たる本作はそういう設定を踏襲しながらも、より物語として完成度が高いものになっている。このパターンが後の映画『エイリアン』や『遊星からの物体X』にも受け継がれているのだろうが、そもそも『遊星からの物体X』は「影が行く」の映画化なので、どちらが先かという話にはなるが、小説や映画という違いはあっても、先輩方の骨子を受け継ぎ、時を経てますます洗練されていったともいえる。
この手の作品のキモは、モンスターそのものの怖さや襲われるサスペンスなどいろいろあるだろうが、個人的に推したいのは、「人間たちがどうやってモンスターの正体を暴き、攻略するか」という過程にある。できればそこが科学的、論理的であればなおよい。本作をSFミステリといってよい理由も実はそこにあり、その点をしっかりと押さえているからこそ面白い。
さすがに1959年の作品ということで古さは否めないし、モンスターがややインパクト不足かなとは思う。モンスターにはもっと殺戮を望むところで、ぶっちゃけ嫌われキャラはさっさとモンスターの餌食になってもらいたいものだが、ここがちとカタルシスに欠けるところではある。
まあ、そういう弱点はあるものの、個人的には十分楽しめる一作であった。
こんな話。アメリカ合衆国と南極を中継する基地になっている絶海の孤島「ガウ島」。今まさに乗員九人を乗せた輸送機が、合衆国へ向かう途中にガウ島へ立ち寄るところであった。ところが着陸を目前にして機内で怪事件が勃発。輸送機は胴体着陸したが、そこには着陸直後に自殺を図ったと思われる機長の死体があるだけで、他の乗員の姿は見えなかった。いったい機内で何が起こったのか? 調査を進める中継基地の隊員たちだったが、原因は不明であった。しかし、奇怪な事件はそれで終わらなかった。機長の死体が何者かの手によって運びさられてしまったのだ……。

いやあ、これはこれは。実にオーソドックスなモンスター小説ではないですか。
孤島の基地という閉ざされた空間、謎の連続殺人、見えないモンスター、そして知力を尽くしてモンスターと対峙する人間、さらには極限状態での人間ドラマというお膳立ては、この手の作品のお約束とはいえ、サスペンスをいやが上にも盛り上げる。古い作品なので構成そのものはシンプルながら、一気に惹き込まれた。
それらの設定はジョン・W・キャンベルの短篇「影が行く」を思い出させ、間違いなくその系譜に連なる作品といえるだろう。だが、後輩たる本作はそういう設定を踏襲しながらも、より物語として完成度が高いものになっている。このパターンが後の映画『エイリアン』や『遊星からの物体X』にも受け継がれているのだろうが、そもそも『遊星からの物体X』は「影が行く」の映画化なので、どちらが先かという話にはなるが、小説や映画という違いはあっても、先輩方の骨子を受け継ぎ、時を経てますます洗練されていったともいえる。
この手の作品のキモは、モンスターそのものの怖さや襲われるサスペンスなどいろいろあるだろうが、個人的に推したいのは、「人間たちがどうやってモンスターの正体を暴き、攻略するか」という過程にある。できればそこが科学的、論理的であればなおよい。本作をSFミステリといってよい理由も実はそこにあり、その点をしっかりと押さえているからこそ面白い。
さすがに1959年の作品ということで古さは否めないし、モンスターがややインパクト不足かなとは思う。モンスターにはもっと殺戮を望むところで、ぶっちゃけ嫌われキャラはさっさとモンスターの餌食になってもらいたいものだが、ここがちとカタルシスに欠けるところではある。
まあ、そういう弱点はあるものの、個人的には十分楽しめる一作であった。
さあのうずさん
ラインスターはB級感が楽しくて、同じモンスター系の『ガス状生物ギズモ』も読んでみようかなと思っています。あくまでSFミステリという括りで読んでいるのですが、面白い作家がいるとついつい横道に逸れがちで困ったものです。
SFミステリはかなり集まったので、今年いっぱいかけてまだまだ読んでいきます。よろしくどうぞ。
Posted at 09:58 on 05 18, 2023 by sugata