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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


泡坂妻夫『ダイヤル7をまわす時』(創元推理文庫)

 泡坂妻夫の短篇集といえば、やはり亜愛一郎とかヨギ ガンジーといったキャラクターものが有名だが、ノンシリーズにもいい作品集が多い。本日の読了本はノンシリーズとしては三冊目の短篇集にあたる『ダイヤル7をまわす時』。

 ダイヤル7をまわす時

「ダイヤル7」
「芍薬(しゃくやく)に孔雀(くじゃく)」
「飛んでくる声」
「可愛い動機」
「金津(かなづ)の切符」
「広重好み」
「青泉(せいせん)さん」

 収録作は以上。
 本書はもともと光文社から単行本で出たものだが、その時点で既にデビューから十年ほど経過しており、安定の一冊という感じ。最初期ほどのキレッキレな作品はないが、バラエティに富んだ味のある作品、物語としてのオチを重視した作品が揃っているという印象。デビュー十年の著者の余裕がうかがえる、好短篇集である。

 巻頭を飾る「ダイヤル7」は個人的に本書のベスト。問題編と解答編に分かれたミステリ、というとガチガチの本格に思えるだろうが、実はそれだけでは終わらない絶妙な趣向が施されている。まず、問題編と解答編に分かれてはいるが、これは読者に向けてというだけではなく、実はストーリーの一部でもある。どういうことかというと、本作は元刑事と思しき男性が、講演会のような場で過去に扱った事件を聴衆に話しているという設定で、その講演の中で聴衆にクイズを出しているのだ。
 事件は対立する暴力団の組長殺人事件で、なぜか現場から犯人が犯行直後に電話をかけた形跡が見つかり……というもの。もちろんこのネタだけでも十分なのだが、元刑事がひと通り答えを説明した後に話す内容によって、本筋とは別のところでサプライズがあり、これが実にいいのだ。

 「芍薬に孔雀」は著者お得意のカードに関する蘊蓄を含んだ佳作。全身にトランプのカードを詰め込まれた奇妙な死体の謎がお見事。有名なトリックだが、こういうアレンジもあるか。

 団地での声の漏れが事件の鍵を握る「飛んでくる声」。着想は面白いが、いろいろと強引なネタでこれはちょっと落ちる。

 「可愛い動機」はフランスのサスペンス風だが、まずまずのサプライズの後にくるラスト一行が効果的。

 「金津の切符」は鉄道マニアの生態を描き、こちらもネタとしては面白いが出来はもうひとつ。

 恋愛小説も泡坂妻夫が書くとこうなるという「広重好み」は、逆転する構図がお見事。でも初恋の相手を勝手に探すのは、かなりの迷惑行為だと思うよ(笑)。

 「青泉さん」は予想外の落としどころが待っている佳作。作者の意図を途中までまったく悟らせない作品は好みである。

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Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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