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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ジョージ・R・シムズ、他『英国犯罪実話集』(ヒラヤマ探偵文庫)

 今月は文学フリマがあったおかげで、いろいろと同人の類が発行され、いくつか買い集める。以前は仕事の関係でコミケやらコンベンションにはいろいろと参加したことがあるのだが、年のせいで体力的にああいうのが辛く、最近はすっかりご無沙汰である。ネット上での知人の方々のお顔も拝見したいし、直接ご挨拶もしたいところだが、とりあえずネット販売の売り上げには貢献しているので勘弁してもらおう。

 本日の読了本は、そんな同人本というか私家版(いつも呼称に困ってしまうのだが)の中から、管理人が贔屓にしているうちの一つ、ヒラヤマ探偵文庫さんの『英国犯罪実話集』である。
 ヒラヤマ探偵文庫はクラシック・ミステリ専門のレーベルだが、これは珍しくノンフィクションの一冊。かの『ストランド・マガジン』に掲載されたヴィクトリア朝時代の犯罪実話からセレクトした記事をまとめたものだ。

 英国犯罪実話集

「犯罪と犯罪者」
「殺人における独創性」
「未解決犯罪事件」
「名刑事の離れ業」
「史上もっとも狡猾な犯罪はどれか? 有名犯罪学者によるシンポジウム」

 収録作は以上。「犯罪と犯罪者」はロンドン警視庁が所蔵する犯罪の数々の証拠品などを紹介し、その事件を語るというもの。著者名が記載されていないので、これは当時の編集者が直接まとめたものか。
 「殺人における独創性」、「未解決犯罪事件」、「名刑事の離れ業」の三作はヒラヤマ探偵文庫から出ている『女探偵ドーカス・デーン』の著者、ジョージ・R・シムズによる犯罪実話。
 「史上もっとも狡猾な犯罪はどれか? 有名犯罪学者によるシンポジウム」は、複数の著者がそれぞれお気に入りの犯罪実話を紹介している。

 個人的にはあまり犯罪実話は読まず、殺人もあくまで小説だから読むというスタンスなのだが、本書に関してはミステリを楽しむための副読本もしくは参考図書という感じで楽しんだ。ホームズが活躍した時代、ヴィクトリア朝時代のリアルな風俗や犯罪を知ることで、より小説を理解するための一冊というわけである。むろん編者の平山氏もそういう意識で作っているようで、図版も多く収録されているのはありがたいところである。
 全体に実話系は、小説に比べるとどうしても文章が味気なくなってしまうし、さすがにミステリと同じような期待をするのは禁物だが、それでも予想したよりは面白い話が多く、「史上もっとも狡猾な犯罪はどれか? 有名犯罪学者によるシンポジウム」などはなかなかであった。
 当時の作家たちが、こういう実話記事を創作のヒントにしていたかどうかは想像に任せるしかないが、ネットもテレビもない時代、確かにその可能性は高いのだろうね。
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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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