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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


泡坂妻夫『折鶴』(創元推理文庫)

 泡坂妻夫の短篇集『折鶴』を読む。まずは収録作。

「忍火山恋唄」
「駈落」
「角館にて」
「折鶴」

 折鶴

 おおお、これはまたなんと言いますか。むちゃくちゃ好みの路線である。
 泡坂妻夫の作品はテクニカルなミステリばかりでなく、後期には恋愛ものや人情ものも書いていたのは知識として知ってはいたが、それは著者がミステリに飽きてきたとか、マンネリを避けるためとか、なんとなく勝手にそんなことを思っていたのだが、全然そんなことはない。
 言ってみればミステリとロマンの高い次元での融合であり、むしろ著者がミステリを書く以前から持っていた素養が、ついにベールを脱いだような印象すらある。もちろん初期のような超絶技巧があるわけではなく、トリッキーさは物語の邪魔をしない程度に抑えてはいるのだが、それがかえって情念の世界をより美しく見せてくれるのである。
 本書収録の四作とも、主人公が着物関係の職人というのもいい。著者同様に紋章絡みもいれば悉皆屋もおり、呉服に明るくない管理人などは意味を調べつつ読んだりしていたが、そういう手間すら作品の一部のようで心地よい。

 収録作品は全部いい。全部いいのだけれど、あえて言うなら「忍火山恋唄」がマイフェイバリット。ミステリ的にも一番凝っていることもあるが、浄瑠璃の世界、しかも新内を取り上げているところが男女の物語に最適。これは映像化してもいい作品になるだろうなぁ。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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