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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


国枝史郎『沙漠の古都』(桃源社)

 iPodのケースが欲しくて、ここ数日ネットで調べていたのだが、代官山のDiralというお店でなかなか良さげな革製のものを発見。休日の今日、車を飛ばして物をゲットする。なぜかミニチュアカー専門店でランボルギーニ・イオタまで買ってしまい、物欲を満たして帰宅。

 近々、作品社から『国枝史郎探偵小説全集』というものが出版されるそうだ。全集といっても1巻本だが、ミステリ作品23篇の他に評論やエッセイも34篇を収録している。まず間違いなく買いの一冊になるはずだが、この探偵小説全集、お値段もなんと5千円を超えるらしい。値段も十分に全集クラスである。

 で、その予習というわけでもないのだが、国枝史郎の『沙漠の古都』を読む。
 表題作の「沙漠の古都」そのものは、以前に『幻の探偵雑誌7「新趣味」傑作選』(光文社文庫)に収録されたものを読んでいるが、今回は桃源社版。表題作以外に国枝史郎唯一の捕物帖「十二神貝十郎手柄話」、傑作との誉れ高き「銅銭会事変」、そして「哥老会事変」の計四編を収録している。

 「沙漠の古都」は久々に読んだが、けっこう内容を忘れていたこともあって十分楽しめた。長編ではあるが、最初の数編は連作短編としても読め、これが探偵小説仕立てなのである。しかもホームズ+ワトソンの形をしっかり踏まえており、おまけに最初にホームズだと思った人物が、実は引き立て役に終わるところなど、なかなかアクが強い。ところが、これで本格的な探偵小説を期待するとあにはからんや。物語は徐々にスパイもの、冒険もの、秘境ものというように変容していき、いつの間にかすっかり国枝ワールドと化している。とにかく強引なまでの物語だが、あらためて国枝史郎のパワーを痛感した。

 他で印象に残ったのは、やはり「銅銭会事変」。短いながらも「蔦葛木曾棧」や「八ケ嶽の魔神」などの名作のエッセンスがギュッと詰まっている感じ。銅銭会なる秘密結社の有り様や個性的な登場人物たち、先を予測させない展開など、見どころも多く、ぜひ長編で読みたかったと思う。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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