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マイクル・Z・リューイン『眼を開く』(ハヤカワミステリ)
マイクル・Z・リューインの『眼を開く』を読む。いやいや、久々のアルバート・サムスン物だ。前作から何と十年以上も間が開いてしまったが、まずは心から復活を祝いたい。リューインのサムスン物に限らず、ネオ・ハードボイルドとして持てはやされたシリーズの数々が、最近では滅多に翻訳されることもなく、こちとら実に寂しい思いをしていたのだ。
なんせ日本でいまだに刊行されているネオ・ハードボイルドといったら、スペンサーかマット・スカダーぐらいのものではないか。モーゼス・ワインやアロー・ナジャー、名無しの探偵あたりは未訳もけっこうあるはずなのにさっぱりだし、デイブ・ブランドステッターやジョン・マーシャル・タナーに至ってはシリーズそのものが完結しちゃったもんなぁ。そういうなかでサムスン復活は実に喜ばしいニュースなのだ。
私立探偵の免許を失効していたアルバート・サムスンに、遂に免許再発行の時が訪れた。意気揚々と仕事再開に燃えるサムスンだが、そんななか大手弁護士事務所から、友人のミラー警部の身辺調査という仕事が舞い込む。友人とはいえミラーはサムスンが免許を失う原因をつくった張本人。複雑な思いで調査を開始したサムスンだったが……。
免許を失った間のサムスンは、客観的に見ると相当情けない毎日を送っていたようだ。そのせいかせっかく仕事を再開しても、ここかしこに弱さを垣間見せ、かなりのブランクを感じさせる始末。「心優しき探偵」がサムスンの特徴とはいえ、以前はここまでダメダメな男ではなかったはず。しかし、それが久々の探偵仕事をこなすうち、徐々にではあるが本来の彼に戻っていく。これがタイトルにある「眼を開く」ということなのだろう。
そんな再生の物語を、リューインは巧みなユーモアにくるんで語っていく。何といっても会話の妙。ときにはユーモアが勝ちすぎて、逆にやや物足りなく感じる部分もないではない。初期の作品群にあった内省的な部分は、ユーモアと並んでこのシリーズの持ち味でもあったはずだ。ところがこの最新作ではその割合がかなり変わった。だがリューインの近作『探偵家族』シリーズなどを読んでみると、こちらこそがリューインの本来持っている資質ではないかと思ったりもする。
とりあえず今後にさらなる期待。
なんせ日本でいまだに刊行されているネオ・ハードボイルドといったら、スペンサーかマット・スカダーぐらいのものではないか。モーゼス・ワインやアロー・ナジャー、名無しの探偵あたりは未訳もけっこうあるはずなのにさっぱりだし、デイブ・ブランドステッターやジョン・マーシャル・タナーに至ってはシリーズそのものが完結しちゃったもんなぁ。そういうなかでサムスン復活は実に喜ばしいニュースなのだ。
私立探偵の免許を失効していたアルバート・サムスンに、遂に免許再発行の時が訪れた。意気揚々と仕事再開に燃えるサムスンだが、そんななか大手弁護士事務所から、友人のミラー警部の身辺調査という仕事が舞い込む。友人とはいえミラーはサムスンが免許を失う原因をつくった張本人。複雑な思いで調査を開始したサムスンだったが……。
免許を失った間のサムスンは、客観的に見ると相当情けない毎日を送っていたようだ。そのせいかせっかく仕事を再開しても、ここかしこに弱さを垣間見せ、かなりのブランクを感じさせる始末。「心優しき探偵」がサムスンの特徴とはいえ、以前はここまでダメダメな男ではなかったはず。しかし、それが久々の探偵仕事をこなすうち、徐々にではあるが本来の彼に戻っていく。これがタイトルにある「眼を開く」ということなのだろう。
そんな再生の物語を、リューインは巧みなユーモアにくるんで語っていく。何といっても会話の妙。ときにはユーモアが勝ちすぎて、逆にやや物足りなく感じる部分もないではない。初期の作品群にあった内省的な部分は、ユーモアと並んでこのシリーズの持ち味でもあったはずだ。ところがこの最新作ではその割合がかなり変わった。だがリューインの近作『探偵家族』シリーズなどを読んでみると、こちらこそがリューインの本来持っている資質ではないかと思ったりもする。
とりあえず今後にさらなる期待。
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