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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


リチャード・オスマン『木曜殺人クラブ 逸れた銃弾』(ハヤカワミステリ)

 リチャード・オスマンの『木曜殺人クラブ 逸れた銃弾』を読む。高級老後施設クーパーズ・チェイスで毎週木曜日に集まり、未解決事件の解明に励む四人の老人たち。その彼らの活躍を描く、ご存知〈木曜殺人クラブ〉シリーズの一冊であある。

 こんな話。木曜殺人クラブが今回の研究対象に選んだのは、十年前に殺害された女性キャスターの未解決事件。ある特ダネを追っていた彼女は、深夜に車ごと崖から落とされたのだ。木曜殺人クラブの面々はツテをたどり、彼女と仲の良かった有名キャスターのマイクから情報を引き出そうとする。
 一方、木曜殺人クラブの一人、エリザベスは夫と共に謎の男に誘拐され、諜報員時代の友人であった元KGBのヴィクトルを殺害しろと脅迫される。さもないと木曜殺人クラブの友人ジョイスを殺すというのだ……。

 木曜殺人クラブ 逸れた銃弾

 誰しも静かで穏やかな老後を望んでいるのだろうが、木曜殺人クラブの四人は違う。表面的にはそう装っていても、その実は刺激やトラブルを恋しがっている。素人探偵ものにはいかにもありそうな設定だが、本作ではただの素人ではなく、中心メンバーが元諜報員だけに始末が悪い。
 彼らの活動は警察をも上回るが、愛すべき老人たちの行動に、いつしか警察にも友人が増え、そんな彼らのチームプレイが読みどころのひとつ。鮮やかなファインプレイばかりでなく、ドタバタの末の失敗もあるけれど、老人たちの活躍と推理がとにかく魅せるのだ。

 本作もそういった基本スタイルを押さえつつ、メインの事件と並行して、エリザベスが誘拐されたり殺人を強要されたりと、いつになくスリリングなエピソードも描かれて、よりパワーアップした印象だ。ネタバレになるから詳しくは書かないが、中盤でエリザベスの事件が解決するあたりから、もう面白すぎてあとは一気読み。
 どんでん返しもいつになく多いし、それがストーリーを壊さない範囲、やりすぎないところが非常にいい。

 また、このシリーズを支える魅力はキャラクターにあることは過去の感想でも書いたけれど、これは木曜殺人クラブやその関係者だけではない。敵対する悪人や犯罪者にもいえることなのだ。
 本作でも魅力的なキャラクターは多いが、とりわけ刑務所に収容されているコニー・ジョンソンやエリザベスを誘拐するバイキングは実に面白い存在だ。ここまで愛されキャラで統一できるのも、著者の筆力の賜物といえるだろう。

 ということで本作も間違いなくお勧め。シリーズ中でも一番の出来である。


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Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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