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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


笹沢左保『地下水脈』(集英社文庫)

 なかなか本調子とはいかないが、久々に感想をアップする。ものは笹沢左保の『地下水脈』。著者には珍しいシリーズもので、『他殺岬』『求婚の密室』に続くルポライターの天知昌二郎を主人公とする一作である。

 こんな話。駿河湾に面する静岡県由比町で夫婦の心中と見られる事件が起こった。睡眠薬を飲んだ後、排気ガスをホースで車内に引き込みんだのである。しかし、二人には心中するような理由が見当たらず、死んだ男女には不向きな場所でもあった。手掛かりらしきものは、口紅によって「昌二郎 あなたにも」というメッセージが記されたハンカチであった。
 やがて死んだ小松原美子がルポライターの天知昌二郎と知り合いであることが判明し、警察は天知に疑いをかけるが……。

 地下水脈
▲笹沢左保『地下水脈』(集英社文庫)【amazon

 『他殺岬』、『求婚の密室』ほどではないにせよ、本作も非常にプロットの練られた力作と言える。
 ベースにあるのは男女の愛憎劇。そこから派生する人間ドラマが連鎖して悲劇を生み、序盤からはまったく想像できない真相が待っている。確かにぱっと見は二時間サスペンスドラマ的な雰囲気だし、一応は密室みたいな要素もあるのだが、そういう表面的な部分にあまりこだわってはいけない。
 本作の読みどころは、どちらかというとある事件の原因(動機といってもよい)を立証することがメインであり、そういう意味では非常に面白い試みがなされているのだ。

 ただ、事件が事件なのでどうしても派手さには欠けるし、偶然要素もちょっと気になってしまうので、著者の他の傑作と比べるとどうしても一枚落ちるのは仕方ないのだけれど、こういう形でもしっかり読ませるのはさすが笹沢左保であると思う。

 なお、本作は集英社文庫版で読んだが、背表紙が思いっきり誤植しているのはさすがに驚いてしまった。いや、著者名だけは間違えちゃダメだって。
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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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