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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


フランク・グルーバー『コルト拳銃の謎』(創元推理文庫)

 遠出はしない予定だったが、少しはレジャー気分を満喫すべく、日帰りで河口湖へ涼みにいくことになる。しかし河口湖どころか結局ついでとばかりに富士五湖をすべて見て回るという羽目に。しかし、河口湖や山中湖と違い、西湖、精進湖、本栖湖はさすがにマイナーどころだ。土産物屋もあるにはあるが、ほんとに二、三件程度で、ほぼ自然を楽しむだけの場所となっている。ほとんどの人は釣りやヨットやダイビング、キャンプというアウトドア目的なんだろう。いわゆる富士の樹海も少しのぞいてみたが、うん、確かに死体が転がっていてもこりゃ誰も気がつかんわな。

 本日の読了本はフランク・グルーバーの『コルト拳銃の謎』。
 軽ハードボイルドの名手として知られるフランク・グルーバーはいくつかのシリーズ探偵を持っているが、その中で最も多くの長編に登場したのが、本作に登場するボディ・ビルのパンフレット売りジョニーと、その生きた商品見本サムの凸凹コンビ。一応パンフレット売りという職業はあるものの稼ぎは悪く、その日その日の食い扶持を手にするためにいろいろと画策するうち、いつしか事件に巻き込まれるというのがパターンのようだ。

 本作は、冬のシカゴで金欠症となった二人が、十ドルほしさにある男を殴る仕事を引き受けたことから、殺人事件に巻き込まれるというお話。メインとなる素材が、西部の侠盗ジェッシイ・ジェームズ遺愛のコルト拳銃ということで、その手の蘊蓄も豊富(ちなみにグルーバーは西部劇も多く書いており、そちら方面の知識が半端ではないらしい)。

 腕っ節担当のサムと頭脳担当ジョニーが、互いの足りないところを補いつつ大活躍するというのがミソらしく、数ある軽ハードボイルドのなかでもお笑い度はかなり高め。二人のやりとりはもちろん、敵対する連中や警察、端役のキャラにいたるまでがお笑いモードで楽しめる。とはいえミステリとしては予想以上にしっかりしている。逆に複雑にしすぎているきらいもあり、展開もちょっと荒っぽいが、面白い読み物であることは確かだ。

 ちなみに先日読んだ『コーネル・ウールリッチの生涯』には、ウールリッチとグルーバーの交際の様子も描かれている。興味のある方はどうぞ。

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Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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