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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


グウェン・ブリストウ&ブルース・マニング『姿なき招待主』(扶桑社ミステリー)

 グウェン・ブリストウ&ブルース・マニングによる『姿なき招待主』を読む。クリスティの『そして誰もいなくなった』の九年前に発表された、同趣向の先駆的作品である。

 こんな話。ニューオーリンズの上流社会で名を馳せている男女がパーティーに招待された。高層ビルの二十二階にあるペントハウスに集まったのは、地元の銀行家、政治家、女優、劇作家、弁護士、大学教授など八名。不思議だったのは招待主が誰なのか不明なこと、パーティーにも姿を現さないことだった。
 やがてその意味が明らかになる。ラジオから招待主の声が流れ、これから一時間毎に一人ずつゲストを殺害するというのである……。

 姿なき招待主
▲グウェン・ブリストウ&ブルース・マニング『姿なき招待主』(扶桑社ミステリー)【amazon

 孤島とペントハウスの違いはあれど、脱出不可能な空間に閉じ込められたゲストが一人ずつ殺されていくとう設定は、まさに『そして誰もいなくなった』である。ただし、本作の方が九年先行して発表されており、むしろクリスティの方が影響を受けた可能性も高いという。
 さすがに今となってはクリスティ作品の方が完成度、その他もろもろの点で出来は上だと感じるが、本作は決して歴史的価値が勝っているだけの作品ではない。『そして誰もいなくなった』とは異なる点で興味深いところもあるし、サスペンスという点でも負けてはいないだろう。

 サスペンスに大きく寄与しているのは、何より招待主=犯人とゲストの対決という構造を全面的に打ち出していることだ。招待主が終始、謎に包まれている『そして誰もいなくなった』に比べると、そこが大きな違いである。ラジオを通してメッセージを伝えるだけではなく、ゲストとの会話も成立させるところは、招待主の全知全能性を浮き上がらせる。もっと言えば、ほとんど声でしか登場しない招待主ではあるが、非常に特殊なキャラクター性を持たせていることは注目に値する。
 ややネタバレ気味なので詳しくは書かないが、これについては本書の解説でも書かれているとおりで、ある有名作品の系譜に連なるものだ。当時としてはそこが新しかったわけだが、現代では逆にこういう犯人像は理解しやすいところもあり、むしろ今の方がより楽しめる下地があるのかもしれない。

 気になる点もある。変に機械的トリックが多いこと、また、ゲストの癖などを熟知するという前提が必要なことなど、そこまで犯人に都合よく行くかなという感じは否めない。
 また、これは個人的な好みが強くなるけれど、構成や設定、犯人像に至るまで、全体的に子供っぽい印象を受けてしまう。こういうお話なのでどうしても突飛になるのは仕方ないのだけれど、だからこそもう少し設定や会話を自然な感じで馴染ませる工夫があれば良かった。

 ともあれ全体では悪い作品ではないので、記憶が新しいうちに本作の戯曲版『九番目の招待客』も読んでおきたいところだ。

Comments

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fontankaさん

徹底したケレン味重視で、この時代では突出した面白さがありますね。それだけにもう少し緻密な作りにしていれば、『そして〜』を差し置いてミステリ史に残る作品になったのではないでしょうか。

Posted at 19:17 on 01 28, 2024  by sugata

Edit

これ結構気に入りました。(難点はご指摘通りではありますが)
相手の性格?に「賭ける」ところが良かったです。

Posted at 19:06 on 01 28, 2024  by fontanka

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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