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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


笹沢左保『ふり向けば霧』(ノン・ポシェット)

 笹沢左保の『ふり向けば霧』を読む。『本格ミステリ・フラッシュバック』にも取り上げられている作品だが、その中では比較的知られていない方か。

 まずはストーリーから。短大生の千早芙美子は十八歳の時、三角関係のもつれから男女二人を刺殺してしまう。しかし連行される途中で警察官が心臓発作を起こし、その隙に芙美子は逃走。一時は自殺も考えたが、親切な人に巡り合い、長い逃亡生活を送ることになる。
 そして十三年の時が過ぎた。時効が迫る中、潜伏して暮らす芙美子の周囲も変化し、彼女は思い切って上京を決意する。ところが機中で、かつて自分が殺した女の夫・八ツ橋に出会ってしまう。絶望する芙美子だったが、なぜか八ツ橋は逃亡援助を申し出たのだった……。

 ふり向けば霧
▲笹沢左保『ふり向けば霧』(ノン・ポシェット)【amazon

 これは珍しく一発ネタ。ラストのサプライズがすべてであり、ストーリーはもっぱら逃亡生活を送るヒロインの心理描写とサスペンスで引っ張ってゆく。前半は八ツ橋と出会うまでの、中盤は八ツ橋に匿われての生活、そして終盤では、芙美子を追う謎の男の登場、そして八ツ橋自身がある事件に巻き込まれて容疑者となる。
 したがって物語が大きく動くのは終盤に入ってからで、そこまではロマンスとサスペンスを適度に混ぜた比較的まったり進行。ドラマ化を意識したようなロマンス、濡場も満載なので(といってもそこまで刺激は強くないけれど)、人によっては好き嫌いが分かれるかもしれない。

 ただ、アイデア自体は非常に面白い。全体的にサスペンスを高める工夫がもう一つ欲しかったところだが、そこがあまり気にならなければ、ラストのサプライズで十分にお釣りは来るだろう。
 個人的には、もう少しヒロイン・芙美子に対して救いのあるラストだったらなお良かった。著者らしいといえば著者らしいストーリーではあるが。
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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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