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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


P・G・ウッドハウス『よしきた、ジーヴス』(国書刊行会)

 『ジョン・ディクスン・カーの毒殺百録』を翻訳して自費出版された平野氏から、二冊目の訳書となる『ジョン・ディクスン・カーの世界』が届く。しかもハードカバーの立派な装丁じゃないですか。しっかりバーコード等も入り、発行元が創英社、発売元が三省堂とある。ついに商業出版されたかと思いきや、創英社というのは三省堂のなかの自費出版を扱う子会社らしく、そこのシステムを利用されたようだ。ううむ、自費出版にしてもこれぐらいのレベルだとやはり本も映える。前作よりは予算もかかったのだろうが、これなら作る方も買う方も満足感が高いのではないだろうか。ありがたく読ませていただきます。

 本日の読了本はP・G・ウッドハウスの『よしきた、ジーヴス』。先行して出た『比類なきジーヴス』も一応は長編だが、あれは短編を集めて連作長編のような形にまとめ直したもので、本作の場合は純粋な長編。とはいっても、ジーヴスものを読んでいるかぎり、長編と短編の違いをあまり意識することはない。短編の方がキレがある、というような意見もあるようだが、長編の場合はひとつのネタを繰り返したり引っ張ったりという長編でこそ活きるテクニックもある。あるいは本作にも見られるエンディングの鮮やかさも、長編ならではの楽しみといえるだろう。とにかく上質なお笑いという根本的な部分は共通であり、本作でも十分堪能できるはず。
 ただ、少しだけ気になったのは登場人物たちの口調。悪口や罵りの表現がストレートすぎるというか露骨というか、そんな印象を受けた。もちろん場面によっては全然OKだが、『比類なきジーヴス』ではもっとオブラートにくるんだ物言いが多かった気がするのだが。これは訳の影響? それとも原典もそういうノリなのだろうか? いや、たんに私の勘違いかもしれないんだけれど(笑)。
 なお、解説に関しては、前作と違ってなかなか充実している。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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