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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


樹下太郎『銀と青銅の差』(文春文庫)

 じんま疹の薬を飲んでいるとけっこう副作用が辛い。眠気は凄いわ、顔はぽかぽか火照ってくるわ、眼はしばしばするわで、ほとんど仕事が手につかない。仕方なく早退して大人しくしている。

 読了本は樹下太郎の『銀と青銅の差』。以前に『四十九歳大全集』を読んだことはあるが、長編ミステリはこれが初めて。まずはストーリーから。

 その会社の社員バッジには2種類あった。課長職以上を示す銀バッジと、それ以下の青銅バッジである。臨時工として雇われた二人の青年は、それぞれに思うところがありつつも、やがて会社の方針に呑まれ、流されてゆく。尾田は昇進を望みながら青銅に左遷され、大江は昇進と引き替えに自分の生き甲斐を捨てろと命じられる。どこにでもあるサラリーマンの浮き沈み、どこにでもあるサラリーマンの悩み。それがある一線を越えたとき、二人には殺意が芽生えたのだった……。

 微妙。作者の代表作とされる本書だが、正直ここまでミステリ味が薄いとは思わなかった。ただし、ねちねちと描かれるサラリーマンの心理描写は絶妙で、読んでいる間は素直に登場人物たちの言動に入り込むことができ、大衆小説としては一級品であると思う。大なり小なり勤め人ならこの登場人物たちの悩みは理解できるであろうし、また、管理職からみても頷けるところは多かろう。
 惜しむらくはやはりミステリとしてのプラスアルファだ。別に驚天動地のトリックがあればとかまでは望まないが、もっとサスペンスを加味するとか、あるいは社会派的に巨大悪を描くとかすると、また違った評価が得られたのではないか。いや、一介のサラリーマンがどのようにして犯罪を犯すに至ったか、というテーマでも十分といえば十分なのだが。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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