Posted
on
シオドア・スタージョン『輝く断片』(河出書房新社)
OS購入を機にメモリーも増設。ってもたかだか640MBなんだが、いや、自宅ではそんな大層な作業もしないので、これでも十分快適である。
シオドア・スタージョンの『輝く断片』読了。スタージョンも次から次へと刊行される感じで、誠に喜ばしい限り。
SFは嫌いではないが(むしろ好きな方だが)、真っ向からつきあっていくつもりはないので、スタージョンもSFの王道を突き進んでいくようなタイプであれば逆に読まなかったのではないかと思う。本作のようにミステリ風味の強いもの(というか奇妙な味)があればこそだ。逆にいうと、「奇妙な味」であれば、ジャンルを問わず読み続けていくだろう。
Brat「取り替え子」
Affair with a Green Monkey「ミドリザルとの情事」
The Travelling Crag「旅する巌」
When You're Smiling「君微笑めば」
And Now the News...「ニュースの時間です」
Die, Maestro, Die「マエストロを殺せ」
A Crime for Llewellyn「ルウェリンの犯罪」
Bright Segment「輝く断片」
さて『輝く断片』である。本書はあえて「ミステリ短編集」と銘打たれてはいるが、もちろん純粋なミステリはまったくない。一応、犯罪を扱っている程度の認識でよいだろう。スタージョンが扱うのは、「謎」は「謎」でも人間の精神における「謎」であり、なぜ犯罪を犯すに至ったかや、犯したあとの犯罪者の心の動きにスポットを当てている。当然ながらそれは普遍的なものではなく、スタージョンならではの解釈が為されるわけであり、予想できない動機や展開が待っている。
そんな中でのマイ・フェイヴァリットは、まず「ニュースの時間です」。主人公のこだわりだけでも変な話だが、後半の展開がさらに意表を突く。ただ、これってハインラインの提供したネタであるそうな。「マエストロを殺せ」もいい。こちらも後半の犯人の行動や心理が見物で、さすがに名作の誉れ高い傑作だとは思うが、訳の文体がこれでいいのかどうか、ちょっと疑問は残る。また、「ルウェリンの犯罪」はオチが読めるものの、淡々と流れる主人公の心理が興味深い。
考えると挙げた三作はどれも主人公の心の平穏がぶち壊される話ばかりである。それぞれ特殊な人間なので、心のバランスが崩されたときの中和の手段が、また輪をかけて特殊なのだ。しかし大なり小なり普通の人にもこのような症例はあるわけで、昨今テレビで話題になるような異常な事件も、もしかするとこれらの話のような理由があったのかもしれない。そう考えるとちょっと怖い。
シオドア・スタージョンの『輝く断片』読了。スタージョンも次から次へと刊行される感じで、誠に喜ばしい限り。
SFは嫌いではないが(むしろ好きな方だが)、真っ向からつきあっていくつもりはないので、スタージョンもSFの王道を突き進んでいくようなタイプであれば逆に読まなかったのではないかと思う。本作のようにミステリ風味の強いもの(というか奇妙な味)があればこそだ。逆にいうと、「奇妙な味」であれば、ジャンルを問わず読み続けていくだろう。
Brat「取り替え子」
Affair with a Green Monkey「ミドリザルとの情事」
The Travelling Crag「旅する巌」
When You're Smiling「君微笑めば」
And Now the News...「ニュースの時間です」
Die, Maestro, Die「マエストロを殺せ」
A Crime for Llewellyn「ルウェリンの犯罪」
Bright Segment「輝く断片」
さて『輝く断片』である。本書はあえて「ミステリ短編集」と銘打たれてはいるが、もちろん純粋なミステリはまったくない。一応、犯罪を扱っている程度の認識でよいだろう。スタージョンが扱うのは、「謎」は「謎」でも人間の精神における「謎」であり、なぜ犯罪を犯すに至ったかや、犯したあとの犯罪者の心の動きにスポットを当てている。当然ながらそれは普遍的なものではなく、スタージョンならではの解釈が為されるわけであり、予想できない動機や展開が待っている。
そんな中でのマイ・フェイヴァリットは、まず「ニュースの時間です」。主人公のこだわりだけでも変な話だが、後半の展開がさらに意表を突く。ただ、これってハインラインの提供したネタであるそうな。「マエストロを殺せ」もいい。こちらも後半の犯人の行動や心理が見物で、さすがに名作の誉れ高い傑作だとは思うが、訳の文体がこれでいいのかどうか、ちょっと疑問は残る。また、「ルウェリンの犯罪」はオチが読めるものの、淡々と流れる主人公の心理が興味深い。
考えると挙げた三作はどれも主人公の心の平穏がぶち壊される話ばかりである。それぞれ特殊な人間なので、心のバランスが崩されたときの中和の手段が、また輪をかけて特殊なのだ。しかし大なり小なり普通の人にもこのような症例はあるわけで、昨今テレビで話題になるような異常な事件も、もしかするとこれらの話のような理由があったのかもしれない。そう考えるとちょっと怖い。
- 関連記事
-
-
シオドア・スタージョン『一角獣・多角獣』(早川書房) 2006/01/12
-
シオドア・スタージョン『輝く断片』(河出書房新社) 2005/07/25
-
シオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』(河出書房新社) 2004/05/22
-
シオドア・スタージョン『海を失った男』(晶文社) 2003/12/19
-
シオドア・スタージョン『きみの血を』(ハヤカワ文庫) 2003/05/14
-