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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ウイリアム・アイリッシュ『暗闇へのワルツ』(ハヤカワ文庫)

 数年前に治療した歯の詰め物が取れてしまい、しばらく放っておいたのだが、ここ一週間ほどで急に痛みが激しくなってきた。仕方がないので会社を抜け出して歯医者へ。前回治療したときはかなり削ったはずなので、今回はおそらく抜くだろうなと思っていたが、どうやらそれは回避できそう。ちょっと安心。

 ウィリアム・アイリッシュの『暗闇へのワルツ』読了。
 主人公のルイスはそこそこ成功を治めた実業家だが、性格が災いしてかいまだに独身。しかし、通信交際会(今でいう結婚相談所やネットの出会い系みたいなものか?)で知り合った女性とついに結婚することになる。喜びは頂点に達し、新居も用意して準備万端。ところが、花嫁が乗せた船が着いたものの、そこには彼女の姿がなかった。そのときルイスに近づいてきた一人の美女の姿があった……。

 本作は主人公ルイスと悪女ボニーの愛の物語だ。
 ルイスは結婚した女性の正体に気づくも、その危険な魅力に勝つことができず、次第に奈落へ呑み込まれてゆく。この堕落してゆくルイスの心理描写が巧い。お得意の心象風景も織り交ぜながら、カタストロフィへの過程をじわじわと描く。この辺りはまさにアイリッシュの真骨頂だ。もちろん悪女ボニーの性格描写も見事。
 本作には犯罪も出てくるし、サスペンス要素も強い。だが純粋なミステリーとはとうてい言い難いだろう。それこそ昨今流行の「ノワール」がイメージとしてはピッタリかも。ジム・トンプスンあたりとはだいぶ雰囲気は違うが、もしかするとウールリッチはノワールの礎を築いていたのかもしれない。

 ちなみに先日から遂に、ネヴィンズJr.によるウールリッチの評伝を読み始める。一生ホテル暮らしだったとか同性愛者だったとか、断片的な知識はあったが、やはり系統立てて流れで理解しないと、見えるものも見えてこない。まだ数十頁しか進んでいないが、これは力作の予感。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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