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久生十蘭『昆虫図』(現代教養文庫)
久生十蘭『昆虫図』読了。現代教養文庫版傑作選の第IV集である。アンソロジー等でお馴染みの作品が多く、比較的ミステリ風味の強いものが多いようだ。収録作は以下のとおり。
「生霊」
「南部の鼻曲り」
「ハムレット」
「予言」
「復活祭」
「春雪」
「野萩」
「西林図」
「姦」
「母子像」
「春の山」
「虹の橋」
「雪間」
「昆虫図」
「水草」
「骨仏」
上でミステリ風味が強いと書いたが、それは他の久生作品と比べての話で、印象としてはむしろ幻想小説というか純文学に近いかもしれない。人間の心の闇や恐怖、人生の苦さなどをぎゅっと凝縮し、何ともいえぬ美しさにくるんで短編に仕立て上げている。その精華が代表作として有名な「母子像」であり「昆虫図」なのであろう。初めて十蘭を読む人に勧めるなら、やはり本書のような短編集が一番のはず。
個人的にも「昆虫図」は本作でのベストだ。ここまで小説を絵としてイメージできる作品もそうそうないだろう。イメージを与えてくれるという点では、「春の山」や「骨仏」もいい(イメージする理由はそれぞれ異なるが)。
あとは他愛ない話に思えるが「生霊」も好み。狐の化かし合いという冒頭、後半は生霊に扮して見知らぬ家族に招かれるという妙な話だが、作品全体をおおうユーモアというかまったりした空気がいい。
「ハムレット」と「母子像」は定番中の定番。どちらも主人公の抱える「狂気」の部分がひたひたと迫ってくるようで、美しくも怖いお話し。数々のアンソロジーに採られるのもむべなるかな。
「生霊」
「南部の鼻曲り」
「ハムレット」
「予言」
「復活祭」
「春雪」
「野萩」
「西林図」
「姦」
「母子像」
「春の山」
「虹の橋」
「雪間」
「昆虫図」
「水草」
「骨仏」
上でミステリ風味が強いと書いたが、それは他の久生作品と比べての話で、印象としてはむしろ幻想小説というか純文学に近いかもしれない。人間の心の闇や恐怖、人生の苦さなどをぎゅっと凝縮し、何ともいえぬ美しさにくるんで短編に仕立て上げている。その精華が代表作として有名な「母子像」であり「昆虫図」なのであろう。初めて十蘭を読む人に勧めるなら、やはり本書のような短編集が一番のはず。
個人的にも「昆虫図」は本作でのベストだ。ここまで小説を絵としてイメージできる作品もそうそうないだろう。イメージを与えてくれるという点では、「春の山」や「骨仏」もいい(イメージする理由はそれぞれ異なるが)。
あとは他愛ない話に思えるが「生霊」も好み。狐の化かし合いという冒頭、後半は生霊に扮して見知らぬ家族に招かれるという妙な話だが、作品全体をおおうユーモアというかまったりした空気がいい。
「ハムレット」と「母子像」は定番中の定番。どちらも主人公の抱える「狂気」の部分がひたひたと迫ってくるようで、美しくも怖いお話し。数々のアンソロジーに採られるのもむべなるかな。
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Comments
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はじめまして
はじめまして、突然の訪問失礼いたします。
「天使と悪魔と凡人と」というブログで憂さ晴らししている者です。また、ご訪問いただきありがとうございます。
久生十蘭の読者に会えてうれしく思います。
最近はほとんど読書をしなくなりましたが十蘭は止められないところです。
『ハムレット』の「何だか死ぬのも楽しくなってきた」(記憶なので正確ではないかな)このセリフは好きで、このぎりぎりの状態での主人公の精一杯に粋なスタイルにあこがれました。
sugataさんの読書量には遠く及びませんが参考にさせていただきます。
Posted at 19:04 on 05 08, 2011 by 見えない人
見えない人さん
コメントありがとうございます。
久生十蘭はとにかく文章やセリフが素敵ですよね。独特の軽みがあって、リズムもよくて。作品の幅は広いのですが、そういうところはジャンル関係なく楽しめるのがいいです。
最近は久生十蘭の作品もご無沙汰なので、昨年あたりにでた河出文庫あたりで少し読み返そうかなと思います。
ではでは、今後ともよろしくお願いします。
Posted at 19:51 on 05 08, 2011 by sugata