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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


コーネル・ウールリッチ『喪服のランデヴー』(ハヤカワ文庫)

 仕事の関係で東京ビッグ・サイトで開催されているデジタル・パブリッシング・フェアを見学に行く。出版物や制作物など、コンテンツのデジタル化や配信といった技術&サービスのお勉強である。まあ、どちらかというと、併設されている東京国際ブックフェアの方がメインなのだが。
 ここでちょっと気になったのは、ブックフェアの盛り上がりが欠けることだ。やはり仕事の絡みでよくいくパソコンやゲーム関係に比べると、あまり出展者のやる気が伝わってこないようにも感じる。業界の勢いの差みたいなものもあるのだろうか。

 読了本はコーネル・ウールリッチの『喪服のランデヴー』。個人的に7月はウールリッチ強化月間としたので、その第二弾である。しかし、『黒衣の花嫁』に続いて『喪服のランデヴー』も未読とは本当に恥ずかしい限り。さすがに『幻の女』は読んでるけれど。

 さて、それはともかく『喪服のランデヴー』。本作は『黒衣の花嫁』の裏返しとでもいうべき作品で、青年が復讐のため、女性を殺してゆくというもの。ただし、恨みの相手は殺される女性ではなく、その女性の夫や恋人である男性陣。自分の恋人を殺された主人公の青年が、同じ気持ちを味あわせるために犯行に及ぶわけである。
 犯人の描き方にもかなり違いがある。『黒衣の花嫁』では動機を明らかにせず淡々と凶行を重ねていった女性に対し、本作では動機を最初から提示している。これは犯人の悲痛な心情を読者と共有させようという狙いだと思うのだが、ひねりのある『黒衣の花嫁』と違い、最後までストレートに押していく展開もそれを後押ししている。
 好みは分かれるだろうが、個人的にはより痛みが伝わる『喪服のランデヴー』をとる。やはりこの手の世界はウールリッチの独壇場で、文章も当然ながら酔わせてくれます。
 残念ながら、ミステリ的におかしなところや偶然性の強いところがいくつかあるのが玉に瑕。しかも決して心地よい物語ではない。それでもウールリッチの魅力を知るための、必読の一冊と書いておこう。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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