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飛鳥高『死刑台へどうぞ』(ポケット文春)
少し前に読んだ『飛鳥高名作選 犯罪の場』の感想で、飛鳥高の作品は、ゲーム的な要素とメッセージ性がいいところでバランスをとっている、みたいなことを書いた(といっても、いかんせん読了数=サンプルが少ないので予想でしかないのだが)。
本日読み終えた『死刑台へどうぞ』では、そのバランスがだいぶ崩れ、社会派としてのカラーがかなり強く出た作品になっている。だが、いわゆる松本清張らに代表される正当的社会派とは、やはり一線を画しているようだ。
例えば本作では、選挙での汚職に絡む事件が中核となっているのだが、汚職自体に大きく踏み込むことはせず、あくまでその事件に振り回される人々の心の闇を描くことに、作者の狙いがあるように思える。
さらには、普通の社会派では現実的でないからという理由で敬遠されがちな、ミステリとしてのケレン味がある。メインのネタなので詳しくは書かないが、ラストのどんでん返しはやはり作者が探偵小説として本作を書いた証拠にもなろう。
もうひとつ挙げるとすれば、作中で社会派ミステリーがネタとなっている点だ。入れ子細工とまではいかないにせよ、珍しいメタ社会派推理小説ということもでき、このあたりもただの社会派にはしたくないという、作者の姿勢がうかがえて興味深い。
とまあ以上のような読み方で接すれば、本作はまずまず楽しめる作品だと思うのだが、正直なところマイナス点も多く、最初は物語に乗れず難儀した。
これはプロットがもうひとつこなれていないせいもあろう。前半のダラダラとした展開もうまくないが、後半のぐいぐい引き込む展開は逆に強引すぎて説得力に欠ける。最後のどんでん返しも、説得力のある話であればこそ活きてくるが、普通に考えるとけっこうもっともな犯人で、作中の記事はともかく読者をだますところまでは難しいのではないか。また、それ以外にも、第一章の匂わせる書き方がわかりにくさを増長させるだけで、かえって逆効果にも感じたり。
総じて微妙な出来ではあるが、飛鳥高という作家が、時代に乗れなかった理由の一端が、本書にはあるのかもしれない。
本日読み終えた『死刑台へどうぞ』では、そのバランスがだいぶ崩れ、社会派としてのカラーがかなり強く出た作品になっている。だが、いわゆる松本清張らに代表される正当的社会派とは、やはり一線を画しているようだ。
例えば本作では、選挙での汚職に絡む事件が中核となっているのだが、汚職自体に大きく踏み込むことはせず、あくまでその事件に振り回される人々の心の闇を描くことに、作者の狙いがあるように思える。
さらには、普通の社会派では現実的でないからという理由で敬遠されがちな、ミステリとしてのケレン味がある。メインのネタなので詳しくは書かないが、ラストのどんでん返しはやはり作者が探偵小説として本作を書いた証拠にもなろう。
もうひとつ挙げるとすれば、作中で社会派ミステリーがネタとなっている点だ。入れ子細工とまではいかないにせよ、珍しいメタ社会派推理小説ということもでき、このあたりもただの社会派にはしたくないという、作者の姿勢がうかがえて興味深い。
とまあ以上のような読み方で接すれば、本作はまずまず楽しめる作品だと思うのだが、正直なところマイナス点も多く、最初は物語に乗れず難儀した。
これはプロットがもうひとつこなれていないせいもあろう。前半のダラダラとした展開もうまくないが、後半のぐいぐい引き込む展開は逆に強引すぎて説得力に欠ける。最後のどんでん返しも、説得力のある話であればこそ活きてくるが、普通に考えるとけっこうもっともな犯人で、作中の記事はともかく読者をだますところまでは難しいのではないか。また、それ以外にも、第一章の匂わせる書き方がわかりにくさを増長させるだけで、かえって逆効果にも感じたり。
総じて微妙な出来ではあるが、飛鳥高という作家が、時代に乗れなかった理由の一端が、本書にはあるのかもしれない。
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