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E・W・ホーナング『二人で泥棒を』(論創海外ミステリ)
かつて創元推理文庫で「シャーロック・ホームズのライバルたち」というタイトルのもと、思考機械や隅の老人など、同時期に活躍した探偵たちの事件簿をまとめたシリーズがあったが、ついに1冊だけ予告のまま消えていった作品があった。それが怪盗ラッフルズの冒険談である。ルパンに先駆けて登場したこの怪盗は今なお欧米では根強い人気を誇り、ずっと気になっていた作品であった。
それがご存じのとおり、論創社海外ミステリで登場したかと思うと、あれよあれよという間に、なんと全部で3冊ある短編集がすべて刊行されてしまったのだ。長生きはするものである。
そんなわけで本日の読了本はE・W・ホーナングの『二人で泥棒を』。
個人的に怪盗ものが好きなこともあって、かなり期待して読んだのだが。むうう、これはいろいろな意味で予想外の作品である。決して怪盗ルパンやニック、バーニイなど、優れた後輩たちのレベルを期待していたわけではないが、本格やどんでん返しの妙などの要素がここまで薄いとは。ラッフルズものは狭義の探偵小説に入るものではなく、どちらかというとかなりライトな冒険小説という印象である。
また、ラッフルズが泥棒としてはアマチュアであることにも驚いた。当然ながらミスも犯すし、捕まりそうにもなるわけで、読者はそのハラハラドキドキを楽しむという寸法なのだろう。実際、読んでいる間はそれなりに楽しい。ラッフルズと相棒のバニーとのかけあいは、明らかにホームズとワトソンのそれだが、バニーの情けなさが際だち、ユーモアだけでみればドイルを凌ぐかもしれない。
ただ、盗みのテクニックは大したことがないし、ホームズのように推理で魅せることもない。時代といってしまえばそれまでだが、ミステリとしてはそうそういい点数は付けられないだろう。正直、何故今も海外で親しまれているかわからないが、もしかすると日本人が捕物帖を楽しむ感覚なのかもしれない。
うまいなと思ったのは、作品内でけっこう過去の事件に言及するのが多いことか。この物語の魅力がトリックや謎解きにない以上、興味の中心はある程度キャラクターや物語性にあるはず。そこで過去の事件において二人がどんな関係を築いていったか、どんな活躍があったかを匂わせることは、作者が読者に対してシリーズのつなぎや流れを意識させようとしていた証拠ではないだろうか。当時の大衆作家がシリーズ人気を高めるための営業上のテクニックといってもいいだろう。
その極めつけが本書の最後に収録している作品で、ここではそれまでの積み重ねを一気に壊すほどの、驚くべき結末を用意している。ミステリ作家としてはともかく、大衆小説作家としては、やはり光るものを持っていたというべきだろう。
それがご存じのとおり、論創社海外ミステリで登場したかと思うと、あれよあれよという間に、なんと全部で3冊ある短編集がすべて刊行されてしまったのだ。長生きはするものである。
そんなわけで本日の読了本はE・W・ホーナングの『二人で泥棒を』。
個人的に怪盗ものが好きなこともあって、かなり期待して読んだのだが。むうう、これはいろいろな意味で予想外の作品である。決して怪盗ルパンやニック、バーニイなど、優れた後輩たちのレベルを期待していたわけではないが、本格やどんでん返しの妙などの要素がここまで薄いとは。ラッフルズものは狭義の探偵小説に入るものではなく、どちらかというとかなりライトな冒険小説という印象である。
また、ラッフルズが泥棒としてはアマチュアであることにも驚いた。当然ながらミスも犯すし、捕まりそうにもなるわけで、読者はそのハラハラドキドキを楽しむという寸法なのだろう。実際、読んでいる間はそれなりに楽しい。ラッフルズと相棒のバニーとのかけあいは、明らかにホームズとワトソンのそれだが、バニーの情けなさが際だち、ユーモアだけでみればドイルを凌ぐかもしれない。
ただ、盗みのテクニックは大したことがないし、ホームズのように推理で魅せることもない。時代といってしまえばそれまでだが、ミステリとしてはそうそういい点数は付けられないだろう。正直、何故今も海外で親しまれているかわからないが、もしかすると日本人が捕物帖を楽しむ感覚なのかもしれない。
うまいなと思ったのは、作品内でけっこう過去の事件に言及するのが多いことか。この物語の魅力がトリックや謎解きにない以上、興味の中心はある程度キャラクターや物語性にあるはず。そこで過去の事件において二人がどんな関係を築いていったか、どんな活躍があったかを匂わせることは、作者が読者に対してシリーズのつなぎや流れを意識させようとしていた証拠ではないだろうか。当時の大衆作家がシリーズ人気を高めるための営業上のテクニックといってもいいだろう。
その極めつけが本書の最後に収録している作品で、ここではそれまでの積み重ねを一気に壊すほどの、驚くべき結末を用意している。ミステリ作家としてはともかく、大衆小説作家としては、やはり光るものを持っていたというべきだろう。
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