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飛鳥高『細い赤い糸』(講談社文庫)
飛鳥高の『細い赤い糸』読了。汚職や強盗など、4つの異なる事件が起こり、そしてそれぞれに不可解な殺人事件が発生する。なぜ彼らは殺されなければならなかったのか? 4つの事件をつなぐ細い赤い糸は何を意味するのか?
これはいい。個人的にはかなりツボです。大作とはいえないし、ミステリとしての派手なトリックなどもない。だが丁寧な文章と巧みな構成に支えられ、ラストでは見事な着地を決めてみせる。とにかくラスト20ページほどで一気に4つの事件をまとめあげる手腕には、正直感動する。また、読後に残るしみじみとした余韻も素晴らしい。
文章も好感を持てた。けれんが無く、かといって素っ気ないというほどでもない文体で、バランスがいい。場面や人物にあった描写やセリフ回しを、よく練って丁寧に書いているという印象を受ける。この文体だからこそラストの余韻もより活きるのであろう。
発表当時、土屋隆夫や佐野洋、結城昌治、多岐川恭らといった手練れの面々を押さえて、日本推理作家協会賞に輝いたのも伊達ではない。
ちなみに作者の飛鳥高は戦後間もない頃のデビューで、山田風太郎、香山滋らと同時期である。しかし専業作家ではなかっただけに作品数も少なく、今では忘れられつつある作家だ。だが近年の復刻ブームで、河出文庫からは短編集も出ただけに、再評価もある程度されているはず。決して古くささを感じさせる作風でもないし、残る長編もどこかで出せないものだろうか。
なお、今回は講談社文庫版で読んだが、入手しやすいのは双葉文庫か。ただ、講談社文庫版も古書店でけっこう100円とかでも見かけるので、未読の方はぜひどうぞ。
これはいい。個人的にはかなりツボです。大作とはいえないし、ミステリとしての派手なトリックなどもない。だが丁寧な文章と巧みな構成に支えられ、ラストでは見事な着地を決めてみせる。とにかくラスト20ページほどで一気に4つの事件をまとめあげる手腕には、正直感動する。また、読後に残るしみじみとした余韻も素晴らしい。
文章も好感を持てた。けれんが無く、かといって素っ気ないというほどでもない文体で、バランスがいい。場面や人物にあった描写やセリフ回しを、よく練って丁寧に書いているという印象を受ける。この文体だからこそラストの余韻もより活きるのであろう。
発表当時、土屋隆夫や佐野洋、結城昌治、多岐川恭らといった手練れの面々を押さえて、日本推理作家協会賞に輝いたのも伊達ではない。
ちなみに作者の飛鳥高は戦後間もない頃のデビューで、山田風太郎、香山滋らと同時期である。しかし専業作家ではなかっただけに作品数も少なく、今では忘れられつつある作家だ。だが近年の復刻ブームで、河出文庫からは短編集も出ただけに、再評価もある程度されているはず。決して古くささを感じさせる作風でもないし、残る長編もどこかで出せないものだろうか。
なお、今回は講談社文庫版で読んだが、入手しやすいのは双葉文庫か。ただ、講談社文庫版も古書店でけっこう100円とかでも見かけるので、未読の方はぜひどうぞ。
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Comments
Edit
大きな声では言えませんが、高城高と間違って古本屋で年末に買いました。笑って下さい(^^;三文字と「高」しか合ってないです。
最初は汚職事件の話だったので「社会派の企業小説か。きっとこの人が殺人してないのに容疑者になってしまうサスペンス展開?」と思って読み進んでいたら第1章の終わりでびっくり。そして第2章はまったく別の話が始まったのでさらにびっくりでした。
第2章の終わりくらいで作者の意図する構成がわかったのですが、これは面白かったです。まず一つ一つの話が読みやすく引き込まれるし、個々の事件をつなぐ糸が徐々に見えてくるさじ加減も抜群だと思います。
全然知らない作家ですが、なかなか嬉しい驚きでした。(で、高城高はまだ未読)
Posted at 22:17 on 04 25, 2008 by Sphere
Sphereさん
いいでしょ、これ。
でも、どうやったら高城高と間違えるのか、まずそれを聞きたい(笑)。
ちなみに飛鳥高もおっそろしいくらい古書価のつく人なので、下手に本書でファンになると後が大変です。
とりあえず次はぜひ河出文庫の短編集『飛鳥高名作選 犯罪の場』を読んでください。これも最近の本だと思っていたら、いつの間にか品切れっぽいのですが、まだまだネット古書店等では買えると思います。
Posted at 01:24 on 04 26, 2008 by sugata