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久生十蘭『黄金遁走曲』(現代教養文庫)
久生十蘭『黄金遁走曲』読了。収録作は「ノンシャラン道中記」「黄金遁走曲」「花束町一番地」「モンテカルロの下着」の四作で、いずれもヨーロッパを舞台にしたドタバタ喜劇である。
『魔都』でもちらちらと感じたのだが、十蘭は物語るということにおいて、全方位的な資質を持っている作家のようだ。しかもそれがすこぶる高いレベルで。まあ、こんなことはおそらく今までいろいろな人が語っているのだろうが、久生十蘭初心者としては、とにかく感心するばかりなのである。ここ数年、大正から戦後くらいまでの探偵小説を意識的に読み、そしてその魅力にあらためてとりつかれた自分だが、久生十蘭は特別興味深い作家になりつつある。ここまで「読む」という行為を極めようとしていた作家が他にいただろうか?
今回読んだ『黄金遁走曲』で示されるのは、十蘭のコメディ作家としての資質。キャラクターやストーリーも悪くないのだが、それ以上にここでも非常にリズミカルな文体が一層の効果を上げている。
しかもただ単にテンポがいいというのではなく、講談調であったり落語調であったり、いろいろなエッセンスがうかがえる。やはりこういう資質というのは、劇作家であることと無縁ではないはずだ(実際はどうなんだろう?)。
ちなみに文体だけでなく、単語やルビにいたるまでが独創的(そもそもタイトルも「黄金遁走曲」と書いて、「フューグ・ドレエ」と読む)。作者は原稿用紙の上を縦横無尽に泳いでいるようかのようである。
いわゆる探偵小説からは離れているので、そちらを期待する向きには勧められないが、この時代でしか感じられない文化を味わうには、とにかく最適の一冊であろう。
『魔都』でもちらちらと感じたのだが、十蘭は物語るということにおいて、全方位的な資質を持っている作家のようだ。しかもそれがすこぶる高いレベルで。まあ、こんなことはおそらく今までいろいろな人が語っているのだろうが、久生十蘭初心者としては、とにかく感心するばかりなのである。ここ数年、大正から戦後くらいまでの探偵小説を意識的に読み、そしてその魅力にあらためてとりつかれた自分だが、久生十蘭は特別興味深い作家になりつつある。ここまで「読む」という行為を極めようとしていた作家が他にいただろうか?
今回読んだ『黄金遁走曲』で示されるのは、十蘭のコメディ作家としての資質。キャラクターやストーリーも悪くないのだが、それ以上にここでも非常にリズミカルな文体が一層の効果を上げている。
しかもただ単にテンポがいいというのではなく、講談調であったり落語調であったり、いろいろなエッセンスがうかがえる。やはりこういう資質というのは、劇作家であることと無縁ではないはずだ(実際はどうなんだろう?)。
ちなみに文体だけでなく、単語やルビにいたるまでが独創的(そもそもタイトルも「黄金遁走曲」と書いて、「フューグ・ドレエ」と読む)。作者は原稿用紙の上を縦横無尽に泳いでいるようかのようである。
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