- Date: Wed 30 03 2005
- Category: 国内作家 森下雨村
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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森下雨村『謎の暗号』(講談社少年倶楽部文庫)
連チャンで森下雨村。本日はジュヴナイルの『謎の暗号』である。少年探偵を主人公にした連作短編集で、ちょっと異色だと思われるのは主に国内に潜むスパイとの対決をテーマにしている点であろう。
だいたい昭和初期の児童向けの探偵小説といえば、怪人二十面相に代表されるように、芝居がかった魅力的な敵役が登場し、少年探偵たちと知恵比べするパターンが多い。その点、本書は基本構造こそそれらの作品と大差ないにせよ、二つの大きな大戦に挟まれた時代ということもあってか、なかなか政治色が強いところが見られる。単に犯罪を解決するばかりでなく、日本の危機をも救ってしまうという爽快なストーリー展開が魅力である。
ただ、全体的にアバウトなのは少々つらい。この時代の少年向けはここ数年でいろいろと読んできたので、ある程度は免疫もつけてきたつもりだったのだが(笑)。国威高揚的なセリフ然り、スーパーマン的な主人公の活躍然り。だが本作では、後者がとりわけきつい。主人公の少年探偵、東郷富士夫君はこちらの想像をさらに超える活躍をしてしまうため、つっこむ気力すら起きない。なんせ外国語は複数操れるし、バイクには乗る、推理能力はある、おまけに飛んでいる飛行機からビルの窓で起こっている事件まで目撃してしまうおそるべき視力まで備えているのだ。
もちろん万人にお勧めできる代物ではないが、少年探偵ものとしては最初期の作品ということなので、そちらに興味のある向きはどうぞ、といったところか。
だいたい昭和初期の児童向けの探偵小説といえば、怪人二十面相に代表されるように、芝居がかった魅力的な敵役が登場し、少年探偵たちと知恵比べするパターンが多い。その点、本書は基本構造こそそれらの作品と大差ないにせよ、二つの大きな大戦に挟まれた時代ということもあってか、なかなか政治色が強いところが見られる。単に犯罪を解決するばかりでなく、日本の危機をも救ってしまうという爽快なストーリー展開が魅力である。
ただ、全体的にアバウトなのは少々つらい。この時代の少年向けはここ数年でいろいろと読んできたので、ある程度は免疫もつけてきたつもりだったのだが(笑)。国威高揚的なセリフ然り、スーパーマン的な主人公の活躍然り。だが本作では、後者がとりわけきつい。主人公の少年探偵、東郷富士夫君はこちらの想像をさらに超える活躍をしてしまうため、つっこむ気力すら起きない。なんせ外国語は複数操れるし、バイクには乗る、推理能力はある、おまけに飛んでいる飛行機からビルの窓で起こっている事件まで目撃してしまうおそるべき視力まで備えているのだ。
もちろん万人にお勧めできる代物ではないが、少年探偵ものとしては最初期の作品ということなので、そちらに興味のある向きはどうぞ、といったところか。
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毎度ありがとうございます(笑)。
ところで戦前の少年向け探偵小説は中毒性が強いというか、実に危険ですね(笑)。そもそも大人向け以上に突飛な話が多くて面白いし、書誌的にも未だにはっきりしないことも多く、研究者泣かせ。それだけにコレクターを引きつけるのでしょうが、私はせいぜい復刻ものだけを買っていきます(苦笑)。