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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


森下雨村『謎の暗号』(講談社少年倶楽部文庫)

 連チャンで森下雨村。本日はジュヴナイルの『謎の暗号』である。少年探偵を主人公にした連作短編集で、ちょっと異色だと思われるのは主に国内に潜むスパイとの対決をテーマにしている点であろう。
 だいたい昭和初期の児童向けの探偵小説といえば、怪人二十面相に代表されるように、芝居がかった魅力的な敵役が登場し、少年探偵たちと知恵比べするパターンが多い。その点、本書は基本構造こそそれらの作品と大差ないにせよ、二つの大きな大戦に挟まれた時代ということもあってか、なかなか政治色が強いところが見られる。単に犯罪を解決するばかりでなく、日本の危機をも救ってしまうという爽快なストーリー展開が魅力である。

 ただ、全体的にアバウトなのは少々つらい。この時代の少年向けはここ数年でいろいろと読んできたので、ある程度は免疫もつけてきたつもりだったのだが(笑)。国威高揚的なセリフ然り、スーパーマン的な主人公の活躍然り。だが本作では、後者がとりわけきつい。主人公の少年探偵、東郷富士夫君はこちらの想像をさらに超える活躍をしてしまうため、つっこむ気力すら起きない。なんせ外国語は複数操れるし、バイクには乗る、推理能力はある、おまけに飛んでいる飛行機からビルの窓で起こっている事件まで目撃してしまうおそるべき視力まで備えているのだ。
 もちろん万人にお勧めできる代物ではないが、少年探偵ものとしては最初期の作品ということなので、そちらに興味のある向きはどうぞ、といったところか。

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Comments

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呉エイジさん

毎度ありがとうございます(笑)。

ところで戦前の少年向け探偵小説は中毒性が強いというか、実に危険ですね(笑)。そもそも大人向け以上に突飛な話が多くて面白いし、書誌的にも未だにはっきりしないことも多く、研究者泣かせ。それだけにコレクターを引きつけるのでしょうが、私はせいぜい復刻ものだけを買っていきます(苦笑)。

Posted at 21:34 on 08 13, 2018  by sugata

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少年探偵小説

森下雨村の少年探偵物を調べていて、この記事がヒットしました。さすがですね(笑)
最近、少年探偵小説ブームが来ておりまして、
そそる紹介文に魅せられ、速攻こちらのリンクからポチらせて頂きました。

Posted at 19:32 on 08 13, 2018  by 呉エイジ

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子供の時に読んでおいたほうがいい作品というのはありますね、絶対。ただ、それが森下雨村というのはさすがSphereさん(笑)。富士夫君がヒーローというのも凄すぎる。でもまあ、年をとってからツッコミを入れつつ読む富士夫君の活躍も、ネタとしては最高ですし、それはそれで楽しいです。
ただ当時の児童向け探偵小説は、ある意味麻薬ですね。読み物として怖ろしいほど独特の世界を構築しているので、一度はまるとちょっと抜けられないところがあります。

Posted at 22:58 on 05 13, 2007  by sugata

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うわ~、これ懐かしいです(^o^)/
子供の頃(小学校高学年?)の愛読書でしたが、雨村の作品だったとは。
今思い返すと富士夫くんのスーパーマンぶりは笑えますが、当時はつっこむなんてとんでもない。国防色もなんのその、純粋に憧れのヒーローでした。子供の時に読めて幸せだった一冊かもしれません(^^;

Posted at 19:40 on 05 13, 2007  by Sphere

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Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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