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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ロバート・B・パーカー『チャンス』(ハヤカワ文庫)

 読書ペースがもうひとつ捗らなくて困る。原因はあれこれあってハッキリしているのだが。
 それでも日記ぐらいは何とか書こうと思いつつ、読書が進まないとなぜか日記も滞りがち。まあ、感想を日記に残すという目的も確かにあるのだけれど、完全に連動させる必要もそのつもりもないわけで。変な刷り込みができちゃったなと思う。

 久生十蘭や森下雨村を集中的に読もうと思いつつ、少し『魔都』に悪酔いしてしまったので、軽いものをと思いロバート・B・パーカーのスペンサーもの『チャンス』を読んでみる。
 もはやこのシリーズにストーリー紹介は不要な気もしないではないが、一応書いておくと----。
 ボストン暗黒街を牛耳る一方のボスが、娘と共にスペンサーに依頼を持ち込んだ。娘の夫、アンソニイが失踪したので見つけだしてほしいというのだ。しかし、娘に比べるとボスは捜索にまったく熱心ではなく、逆にスペンサーの興味をひいてしまう。やがてアンソニイに賭博癖があることを突き止めたスペンサーは、ホークと共に巨大娯楽都市ラス・ヴェガスへ飛んだ。だが、そこで事件は意外な方向へ進んでゆく……。

 シリーズの中では比較的長めのこの作品。そのせいかどうかはわからないが、もうひとつ読後感として釈然としないものを感じる。いつものキレの良さというかストレートな主張が影を潜めている気がするのである。
 それは例えば中だるみしている構成であったり、珍しく後手をとってしまうスペンサーであったり、じれったい捜査の進捗状況であったりするのだが、これがストーリー上だけのことであればまだ気にならない。問題は登場人物たちの思考や行動にまで影響している点だ。
 特にスペンサーの覇気の無さは気になる。これはスペンサーが年齢的に衰えてきたということになるのだろうか。そして、それは取りも直さず作者パーカーの衰えに他ならない。今や予定調和的なところがウリのこのシリーズで、シリーズが持っていた爽快感や躍動感を失うことは致命的であると思うし、作者がもしそれを意図してやっているのだとしたら、シリーズは大きな曲がり角を迎えているのかもしれない。
 本書読了後の現在、スペンサーものの次作はもう三作ほど邦訳されているはずなので、それらを読めばすぐに答えはわかるのだが、まあ、これは楽しみにとっておきましょう。出来はイマイチながら、久々にシリーズの行方が気になる一冊であった。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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