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 カーター・ディクスンの『貴婦人として死す』読了。
 大学教授の妻、リタ・ウェインライトは情熱的な女性だった。二十余りも年上の夫とでは満たされることがなく、若い男と不倫を繰り返す日々が続いていた。そして無名の俳優バリー・サリヴァンが村に現れたとき、彼女はまたも恋に落ちる。いつしか人目を忍ぶ関係となった二人は駆け落ちするかにみえたが……。二日後、二人は殺人事件の被害者となって発見されたのだった。

 今回、ややネタバレ。
 とりあえず粗筋を書いてはみたが、本作はあまり派手なところのない、カーにとっては比較的地味な作品である。
 その大きな理由として、語り手が老齢の医師ということが挙げられるだろう。カーの作品で語り手となるのは(特にH・Mもの)たいていロマンチストな青年であり、しかもほぼヒロインと恋愛関係に陥ったりし、場を盛り上げるのに一役買っている。ところが本作ではあまり激しい運動もできない、どちらかというと保守的な考え方をする教養豊かな老人なのだ。当然ながら語り口は常識的であり、穏やかである。その分読者も、客観的に事件を見つめることができるわけだ。
 ところが実はこれが曲者であった。老齢の医師を語り手にすべき、確固とした理由があったのである。読み終えたときに思わず舌を巻く巧さで、やられたという感じはなかなか強い。小粒ながらおすすめの一冊といえるだろう。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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