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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ビル・プロンジーニ『雪に閉ざされた村』(扶桑社ミステリー)

 ビル・プロンジーニの『雪に閉ざされた村』読了。実に久々のプロンジーニ。初めて読んだのは名無しの探偵シリーズの『誘拐』で、このシリーズはほぼリアルタイムで読んできており、個人的にはネオ・ハードボイルドにはまるきっかけとなっただけに、大変感慨深い。その後プロンジーニの作品が次々と紹介されるにつれ、彼が単なるハードボイルド作家ではなく、筋金入りのミステリおたくであることも徐々に明らかになってきたわけだが、それはそれで興味深い流れでもあった。
 今からプロンジーニを読もうというなら、ハードボイルドファンは初期の名無しの探偵シリーズは必読。今ではこのシリーズそのものがハードボイルドのパロディ(は言い過ぎか?)ではなかったかとも考えているが、初期作品は純粋に楽しめる。ゲテが好きな人なら『裁くのは誰か?』『決戦!プローズ・ボウル』なんていうのもおすすめ。
 ちなみに合作が多いのも特徴で、もしかするとプロンジーニはミステリの可能性を実作で最大限に模索している、希有な作家(マニア)なのではないかと思う。

 前振りが長くなってしまった。『雪に閉ざされた村』である。
 舞台は山間部にある小さな村だ。人口100人に達しないようなその小さな村にあっても、さまざまな人間模様があり、日々営みが繰り返されている。クリスマスもほど近いある日、その村を猛烈な吹雪が襲い、雪崩が発生した。幹線道路は分断され、村は外界から孤立。人々は困りながらもクリスマスを祝おうとする。だが、折悪しく、村はずれには銀行強盗に失敗した3人の犯罪者が忍びこんでいた。焦りと疲労からかリーダーは村民全員を抹殺し、村中の金品をすべて強奪する計画を練りはじめた……。

 後の茶目っ気はまだ顔を見せておらず、作者が比較的ストレートに書き続けていた頃の作品なので、本作もいたって真っ当な犯罪小説に仕上がっている。
オーソドックスにサスペンスを盛り上げ、アクションで読者を楽しませ、程良い人間ドラマも盛り込む。登場人物たちは皆何かしら心に傷を持つ者ばかりで、事件を通して昇華するというよくある展開だ。
 ただ、こう書くと凡庸なサスペンスと思われるかもしれないが、それは間違い。その語り口は実に見事で職人的だ。とにかく読者の興味を惹くのが巧い。わかっちゃいるけど止められない、というやつ。刊行時の年齢(三十一歳だったか?)を考えればこれは驚異的といってもよいだろう。目新しさはないので必読とは言わないが、読んでも決して損はない作品である。

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Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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