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海野十三『地球盗難』(桃源社)
海野十三の『地球盗難』を読む。以前に読んだソノラマ文庫版と違い、本作は桃源社版で、「地球盗難」の他に「海底大陸」「怪鳥艇」を収録した中編集的一冊。「地球盗難」の感想については以前の日記に書いたので省略し、他の2冊について触れておこう。
「海底大陸」は「地球盗難」同様、地球侵略ものに近いが、相手は宇宙人ではなく、海底人である。和平を願う日本人科学者と海底人の願いもむなしく、イギリス人らの手によって戦争へと導かれる、というストーリー。露骨な反欧米感情、ただしドイツには好意的という、当時の世相を強く反映している点は相変わらず。海底大陸に暮らすうち軟体動物のような姿になった海底人の設定などは面白いが、これからというところで物語が終わっているのはどうにも物足りない。
「怪鳥艇」は、怪鳥艇という未来的航空機に若干のSF要素は感じられるものの、基本は軍事冒険もの。ただし、怪鳥艇を開発し操縦するのが少年たちという設定で、しかもその目的が消息を絶った父を捜すため、加えてたった2機でアメリカ軍の戦闘機編隊を軽く一蹴してしまうところなど、トンデモ度は高い。だが時代ゆえの偏見を取り除いてみれば、傑作『浮かぶ飛行島』に匹敵する冒険活劇といえるだろう。タイムリーにこの作品を読んだ当時の子供たちは、主人公の少年たちの活躍に胸躍らせたに違いない。惜しむらくは終盤に主人公の父親が見つかってからの展開が慌ただしいこと。これは「海底大陸」にもいえるのだが、初出時の事情(雑誌連載の都合とか)でもあったのだろうか?
「海底大陸」は「地球盗難」同様、地球侵略ものに近いが、相手は宇宙人ではなく、海底人である。和平を願う日本人科学者と海底人の願いもむなしく、イギリス人らの手によって戦争へと導かれる、というストーリー。露骨な反欧米感情、ただしドイツには好意的という、当時の世相を強く反映している点は相変わらず。海底大陸に暮らすうち軟体動物のような姿になった海底人の設定などは面白いが、これからというところで物語が終わっているのはどうにも物足りない。
「怪鳥艇」は、怪鳥艇という未来的航空機に若干のSF要素は感じられるものの、基本は軍事冒険もの。ただし、怪鳥艇を開発し操縦するのが少年たちという設定で、しかもその目的が消息を絶った父を捜すため、加えてたった2機でアメリカ軍の戦闘機編隊を軽く一蹴してしまうところなど、トンデモ度は高い。だが時代ゆえの偏見を取り除いてみれば、傑作『浮かぶ飛行島』に匹敵する冒険活劇といえるだろう。タイムリーにこの作品を読んだ当時の子供たちは、主人公の少年たちの活躍に胸躍らせたに違いない。惜しむらくは終盤に主人公の父親が見つかってからの展開が慌ただしいこと。これは「海底大陸」にもいえるのだが、初出時の事情(雑誌連載の都合とか)でもあったのだろうか?
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