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小酒井不木『小酒井不木探偵小説選』(論創ミステリ叢書)
論創ミステリから『小酒井不木探偵小説選』読了。
この叢書のなかではメジャーどころに思えるが、本作に採られているのは、なんと不木がデビューしたての頃に書いていたジュヴナイルのみ。だからといって只のマニア向けの一冊かというとそんなことはない。ジュヴナイルとはいっても堂々たる本格であり、しかも天才少年・塚本俊夫君を探偵役にしたシリーズものなのである。大人向けのものを書くようになってからは、かえって本格から遠ざかった感のある不木なので、これはなかなか新鮮。
正直、子供向けなので他愛ないトリックや仕掛けもあり、文体もややぎこちない。天才とはいえ12歳の子供が大人たちとため口をきき、堂々やり合う部分も慣れるまでは違和感があるかもしれない。だが、このストレートな探偵小説群には、不木がミステリというものを正しく普及していこうという熱意のようなものを感じることができる。
金田一少年やコナンも悪くはないけれど、活字でこういう真っ当な探偵小説に触れた当時の子供たちはなんと幸せなことか。乱歩の少年探偵団とは、またひと味違った子供向けミステリ。読んでおいて損はない。
なお、収録作は以下のとおり。
「紅色ダイヤ」
「暗夜の格闘」
「髭の謎」
「頭蓋骨の秘密」
「白痴の知恵」
「紫外線」
「塵埃は語る」
「玉振時計の秘密」
「現場の写真」
「自殺か他殺か」
「深夜の電話」
「墓地の殺人」
「不思議な煙」(未完)
「空中殺人団(パウル・ローゼンハイン作、鶴毛寧夫訳)
「科学的研究と探偵小説」
「『少年科学探偵』序」
「『小酒井不木集』はしがき」
この叢書のなかではメジャーどころに思えるが、本作に採られているのは、なんと不木がデビューしたての頃に書いていたジュヴナイルのみ。だからといって只のマニア向けの一冊かというとそんなことはない。ジュヴナイルとはいっても堂々たる本格であり、しかも天才少年・塚本俊夫君を探偵役にしたシリーズものなのである。大人向けのものを書くようになってからは、かえって本格から遠ざかった感のある不木なので、これはなかなか新鮮。
正直、子供向けなので他愛ないトリックや仕掛けもあり、文体もややぎこちない。天才とはいえ12歳の子供が大人たちとため口をきき、堂々やり合う部分も慣れるまでは違和感があるかもしれない。だが、このストレートな探偵小説群には、不木がミステリというものを正しく普及していこうという熱意のようなものを感じることができる。
金田一少年やコナンも悪くはないけれど、活字でこういう真っ当な探偵小説に触れた当時の子供たちはなんと幸せなことか。乱歩の少年探偵団とは、またひと味違った子供向けミステリ。読んでおいて損はない。
なお、収録作は以下のとおり。
「紅色ダイヤ」
「暗夜の格闘」
「髭の謎」
「頭蓋骨の秘密」
「白痴の知恵」
「紫外線」
「塵埃は語る」
「玉振時計の秘密」
「現場の写真」
「自殺か他殺か」
「深夜の電話」
「墓地の殺人」
「不思議な煙」(未完)
「空中殺人団(パウル・ローゼンハイン作、鶴毛寧夫訳)
「科学的研究と探偵小説」
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