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角田喜久雄『黄昏の悪魔』(春陽文庫)
角田喜久雄の長編まとめ読みの三発目。『黄昏の悪魔』読了。
本作は『霧に棲む鬼』と同様、女性を主人公にした巻き込まれ型のスリラーだ。ただ展開がかなり似ており、記憶が新しいこともあって読んでいてどうにも混乱する。
主人公は戦争で両親を亡くした天涯孤独の女性、リエ。貧しい暮らしを余儀なくされ、就職活動も思うように進まず、食べるものすら事欠く始末だった。
だが、それに追い打ちをかけるかのように、彼女をつけ狙い、金を盗んだり、就職活動の邪魔をする男の存在があった。男はリエを極限まで追いつめたところで救いの手を差し伸べ、そのまま強引に結婚を迫る。ところが男は何者かの手によって殺害され、なんとか逃げ延びた彼女だったが、その前にまたもや別の男が現れ、彼女を拉致すると結婚を迫るのだった……。
後半はさすがに『霧に棲む鬼』とは異なる展開を見せるが、前半のパターンはそっくり。しかもヒロインの性格もけっこう似ており、運命と男に翻弄されるまま、我が身の不幸を呪うという感じで、いかにも時代を感じさせる。
背景にあるのが長い年月にまたがる因縁、という部分もお馴染みの特徴のひとつか。ついでにいうと、探偵役のヒーローが終盤になって突然活躍し、ヒロインが姿を見せなくなるところも同じである。このしり切れトンボ感さえなければもう少しカタルシスもあるのだが……。いろんな意味で中途半端な一作。
本作は『霧に棲む鬼』と同様、女性を主人公にした巻き込まれ型のスリラーだ。ただ展開がかなり似ており、記憶が新しいこともあって読んでいてどうにも混乱する。
主人公は戦争で両親を亡くした天涯孤独の女性、リエ。貧しい暮らしを余儀なくされ、就職活動も思うように進まず、食べるものすら事欠く始末だった。
だが、それに追い打ちをかけるかのように、彼女をつけ狙い、金を盗んだり、就職活動の邪魔をする男の存在があった。男はリエを極限まで追いつめたところで救いの手を差し伸べ、そのまま強引に結婚を迫る。ところが男は何者かの手によって殺害され、なんとか逃げ延びた彼女だったが、その前にまたもや別の男が現れ、彼女を拉致すると結婚を迫るのだった……。
後半はさすがに『霧に棲む鬼』とは異なる展開を見せるが、前半のパターンはそっくり。しかもヒロインの性格もけっこう似ており、運命と男に翻弄されるまま、我が身の不幸を呪うという感じで、いかにも時代を感じさせる。
背景にあるのが長い年月にまたがる因縁、という部分もお馴染みの特徴のひとつか。ついでにいうと、探偵役のヒーローが終盤になって突然活躍し、ヒロインが姿を見せなくなるところも同じである。このしり切れトンボ感さえなければもう少しカタルシスもあるのだが……。いろんな意味で中途半端な一作。
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