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ニコラス・ブレイク『死の殻』(創元推理文庫)
『野獣死すべし』があまりに見事で有名すぎるため、逆に他の作品がそれほど知られていないニコラス・ブレイク。『野獣死すべし』は派手だがあくまで例外、その他の多くの作品は作風も地味で、それが知名度の落ちる大きな要因のひとつといえるだろう。
しかし、豊かな人物描写や渋いけれども考え抜かれたプロット、意外な真相という数々の長所は、読まなかったことを後悔させるに十分な水準をキープしている。
ただ、ミステリ歴の浅い人、若い人には、それでもアピールが弱いのは確か。私もブレイクは『野獣死すべし』から入ったが、その感激よもう一度という感じで読んだ数冊はピンと来なかった。今、思うと何を読んでいたんだか、という感じで恥ずかしい限りだが、ある程度ミステリ経験を積んで再読したとき、それらの作品が実は大変な輝きを持っていたことを再確認したのである。
そんなわけで本日の読了本は、ニコラス・ブレイク『死の殻』。
空の英雄と謳われる伝説の飛行士、ファーガス・オブライエン。知り合いの誰もが好人物と評するファーガスだが、そんな彼のもとへ復讐を意味する脅迫状が届く。殺害予告の日はクリスマス。伯父の警視監から警護にあたってくれと頼まれた私立探偵のナイジェル・ストレンジウェイズは、招待客を装ってファーガスの滞在する屋敷へと向かう。クリスマスを控え、次々と集まるお客たち。この中に脅迫状の送り主がいるのか? ナイジェルは招待客の動向を探りながら監視を続けるが、雪の降るクリスマスの夜、オブライエンは死体となって発見される……。
上で書いた長所、すなわち「豊かな人物描写」や「渋いけれども考え抜かれたプロット」、「意外な真相」がすべて当てはまる傑作。とにかく人物がしっかり描かれていることが本作の大前提ではないだろうか。驚くべき真相も、ラストのどんでん返しも、論理的な謎解きも、これがあるから活きている。ミステリ2作目とは思えないほどの完成度である。ナイジェルがまだ若いため、鼻っ柱の強いところと謙虚なところが入り交じっているのはご愛敬か。
こう書くと語弊があるかもしれないが、ブレイクが書くものは単なるミステリ以上の味わいがある。だから止められない。とびきり強烈なトリックなどなくてもよいから、こういう小説としてしっかりしたミステリを読ませてもらいたいと思う。
しかし、豊かな人物描写や渋いけれども考え抜かれたプロット、意外な真相という数々の長所は、読まなかったことを後悔させるに十分な水準をキープしている。
ただ、ミステリ歴の浅い人、若い人には、それでもアピールが弱いのは確か。私もブレイクは『野獣死すべし』から入ったが、その感激よもう一度という感じで読んだ数冊はピンと来なかった。今、思うと何を読んでいたんだか、という感じで恥ずかしい限りだが、ある程度ミステリ経験を積んで再読したとき、それらの作品が実は大変な輝きを持っていたことを再確認したのである。
そんなわけで本日の読了本は、ニコラス・ブレイク『死の殻』。
空の英雄と謳われる伝説の飛行士、ファーガス・オブライエン。知り合いの誰もが好人物と評するファーガスだが、そんな彼のもとへ復讐を意味する脅迫状が届く。殺害予告の日はクリスマス。伯父の警視監から警護にあたってくれと頼まれた私立探偵のナイジェル・ストレンジウェイズは、招待客を装ってファーガスの滞在する屋敷へと向かう。クリスマスを控え、次々と集まるお客たち。この中に脅迫状の送り主がいるのか? ナイジェルは招待客の動向を探りながら監視を続けるが、雪の降るクリスマスの夜、オブライエンは死体となって発見される……。
上で書いた長所、すなわち「豊かな人物描写」や「渋いけれども考え抜かれたプロット」、「意外な真相」がすべて当てはまる傑作。とにかく人物がしっかり描かれていることが本作の大前提ではないだろうか。驚くべき真相も、ラストのどんでん返しも、論理的な謎解きも、これがあるから活きている。ミステリ2作目とは思えないほどの完成度である。ナイジェルがまだ若いため、鼻っ柱の強いところと謙虚なところが入り交じっているのはご愛敬か。
こう書くと語弊があるかもしれないが、ブレイクが書くものは単なるミステリ以上の味わいがある。だから止められない。とびきり強烈なトリックなどなくてもよいから、こういう小説としてしっかりしたミステリを読ませてもらいたいと思う。
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