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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


J・K・ローリング『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(下)』(静山社)

 先週からずっと体調がすぐれない。心身両面だから困ったもんだ。

 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(下)』読了。前作『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』ではやや物足りなさを覚えたが、結果からいうと今回も100パーセント満足とはいかなかった。
 とにかく気になるのは、いったい作者はなぜこんなにフラストレーションが溜まる書き方をしなければいけないのだろう、ということ。「困難の克服」というのは、民話などでも重要な要素であるからもちろんあってかまわないし、教育的配慮も作者が念頭に置いていることは間違いない。だが、シリーズ当初ならいざ知らず、相変わらずの敵味方入り乱れての「依怙贔屓」に読んでいても疲れるばかりである。
 おまけにハリーも5歳も歳をとったというのに、ほとんど精神的な成長が感じられない。人を疑ったり、自己弁護したりすることはうまくなったが、人間的な魅力はどんどん薄れてきているような気がする。ただ、このこと自体は作中でも触れられており、作者もそういう少年の心について描きたかったのだろうとは思うが。

 感心するのはプロット作りや伏線の張り方の巧さか。下手なミステリ作家顔負けに、あちらこちらに仕掛けを施し、あとから読むと、ああなるほどと感心するところも少なくない。長い話を一気に読ませるだけの力はあるし、クライマックスでの派手な魔法合戦も悪くない。不満はあるが、トータルでは70点というところか。残すところあと2巻だから、このまま何とか失速せずにいってほしいものである。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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