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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ジーン・ウェブスター『続あしながおじさん』(新潮文庫)

 ジーン・ウェブスターの『続あしながおじさん』読了。
 『あしながおじさん』の続編というわけで、前作同様書簡集という形式で書かれた作品だ。ただし、主人公は孤児の大学生ジルーシャ・アボットではなく、彼女の大学時代の親友サリーである。サリーはジルーシャ夫妻に頼まれて、何とジョン・グリア孤児院の園長を引き受けることになり、その日々の暮らしと仕事ぶりを綴ったお話なのだ。

 で、感想だが、ある程度は楽しく読めるものの、やはり前作の域には及ばないといったところか。「あしながおじさん」の正体という興味がないのも大きいが、やはり主人公の設定の差はいかんともし難い。前作の主人公ジルーシャは、天涯孤独の身の上で孤児院育ちの女子大生。これは実に強烈なバックボーンであり、それゆえのバイタリティや考え方、ユーモアのセンスというのが魅力であった。
 対して本作のサリーは有閑令嬢というキャラクターゆえ随所に共感できない部分が見られる。それが変化していく様が逆に興味の中心となるのだろうが、個人的には引き込まれるというところまではいかなかった。

 また、ジルーシャも今作では大いに株を落としている。前作であれだけ輝いていた彼女なのに、結婚した途端にずいぶん人が変わったようになったのはどういうことか。
 作家の夢も捨て去って夫と世界旅行にほうけるだけでも何だかなあという感じなのに、サリー&孤児院への不義理をプレゼントで濁してしまうというやり方は、それこそ彼女が嫌っていたブルジョワジー的態度ではないのか。この豹変ぶりは何なのだ。設定を活かすためにある程度犠牲にした部分もあるのだろうが、もう少しキャラクターを大事にしてほしかった。

 結局、本シリーズはやはり若いときに読んでおくべき本なのだろう。男女差や読書時の年齢で感じ方はずいぶん変わるだろうが、少なくとも『あしながおじさん』と『続あしながおじさん』は、主人公たちと素直に同化できる人にこそふさわしい読み物なのだ。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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