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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


マイクル・Z・リューイン『探偵家族/冬の事件簿』(ハヤカワミステリ)

 関東地方は本日より梅雨入り。鬱陶しい日々が始まる。

 マイクル・Z・リューインの『探偵家族/冬の事件簿』を読む。
 リューインと言えば私立探偵アルバート・サムスンやパウダー警部もので知られているが、ここ最近はまったく新作が紹介されず、寂しいかぎりであった。その隙間を埋めるように登場したのが家族全員で探偵業を営む(実際は全員というわけでもないのだが)探偵家族のルンギ一家シリーズである。

 ややコミカルながらもしっかりネオハードボイルドしていたサムスンや、より真っ当なパウダー警部ものなどと違い、こちらは極めてほのぼの系だ。形式的には複数の事件が同時進行するモジュラー型といえる。
 ただし、そのどれもが他愛ない事件であり、ときには事件ですらない。加えてルンギ家に巻き起こる家族内のトラブルも発生する始末。あくまでミステリは衣装であり、中身はユーモア溢れる家族小説といった趣だ。いつものリューインの作品を期待するとかなり裏切られる羽目になるが、さすがに読ませる技術は高く、キャラクターを楽しむ物語と割り切ればまったく問題ないだろう。

 本作ではブティックへの強請り、ポケベルでの脅迫事件、伯父殺しという三つの事件が同時に進行し、しかもここに家族のトラブルが三つも四つも重なってくる。作者のサービスの徹底ぶりは恐れ入るが、正直、前半はかなり忙しなく、やや消化不良の感がある。しかし後半に入ってそれを一気に収束に持っていき、かつ家族の絆を巧みに描くところはさすがリューイン。

 というわけで一応は楽しめるレベルにある作品なのだが、それでもやっぱりサムスンやパウダー警部ものの方がいいよなぁ、と思ってしまうところに本作の限界があるような気がする。今さらこういうものをリューインが書く必要はあるのだろうか?

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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