- Date: Sat 08 05 2004
- Category: 海外作家 ボワロ&ナルスジャック
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
- Response: Comment 0 Trackback 0
ボワロ&ナルスジャック『大密室』(晶文社)
ボワロ&ナルスジャックの『大密室』を読む。
ボワロ&ナルスジャックとはいっても本書はいつもの合作ではなく、二人がコンビを組む以前、シングルで作家をやっていた時代にそれぞれが書いた作品を集めたものだ。すなわちピエール・ボワロの『三つの消失』およびトーマ・ナルスジャックの『死者は旅行中』である。二作ともフランス冒険小説大賞を受賞した出世作で、さらには今はなき『EQ』誌に連載された。実はそのときリアルタイムで読んでいるはずなのだが、恐ろしいくらい中身を覚えていないので、あらためて読んでみた次第。
『三つの消失』はタイトルどおり三つの不可能犯罪を扱った作品。
密室での絵の消失、衆人環視のなかで壁をすり抜けた男、往来での囚人護送車の消失。それぞれのトリックはそれほど大したものではないが、シンプルさゆえの説得力はある。また、トリックの必然性や各事件の関連性もフォローしている点は好感が持てるところだ。
最近の濃い目のミステリに慣れていると、やや淡泊すぎる嫌いもあるが、無駄に長いよりはましであろう。
お次はナルスジャックの『死者は旅行中』。詳しくは書かないが、ある有名女流作家の有名作品と同じネタを使った、船舶での連続殺人をテーマにしている。
とにかく不可思議な「消失」事件が次から次へと起こり、主人公が推理をコロコロと変えていく過程が面白く、いったい真実はどれなんだ、というのがミソ。『三つの消失』に比べると物語に動きがあり、こちらの方が一般向け。結末も鮮やかだが、ちょっと荒っぽい感じが否めないのが欠点か。いや、よく考えられてはいるのだが。
それにしてもボワロ&ナルスジャックの合作はかなり紹介されているが、単独作品はほとんど現在入手できない昨今。どこかまとめて翻訳してくれるところはないのだろうか。ポール・アルテだけではない。フランス本格ミステリをぜひもっと味わってみたいものだ。
ボワロ&ナルスジャックとはいっても本書はいつもの合作ではなく、二人がコンビを組む以前、シングルで作家をやっていた時代にそれぞれが書いた作品を集めたものだ。すなわちピエール・ボワロの『三つの消失』およびトーマ・ナルスジャックの『死者は旅行中』である。二作ともフランス冒険小説大賞を受賞した出世作で、さらには今はなき『EQ』誌に連載された。実はそのときリアルタイムで読んでいるはずなのだが、恐ろしいくらい中身を覚えていないので、あらためて読んでみた次第。
『三つの消失』はタイトルどおり三つの不可能犯罪を扱った作品。
密室での絵の消失、衆人環視のなかで壁をすり抜けた男、往来での囚人護送車の消失。それぞれのトリックはそれほど大したものではないが、シンプルさゆえの説得力はある。また、トリックの必然性や各事件の関連性もフォローしている点は好感が持てるところだ。
最近の濃い目のミステリに慣れていると、やや淡泊すぎる嫌いもあるが、無駄に長いよりはましであろう。
お次はナルスジャックの『死者は旅行中』。詳しくは書かないが、ある有名女流作家の有名作品と同じネタを使った、船舶での連続殺人をテーマにしている。
とにかく不可思議な「消失」事件が次から次へと起こり、主人公が推理をコロコロと変えていく過程が面白く、いったい真実はどれなんだ、というのがミソ。『三つの消失』に比べると物語に動きがあり、こちらの方が一般向け。結末も鮮やかだが、ちょっと荒っぽい感じが否めないのが欠点か。いや、よく考えられてはいるのだが。
それにしてもボワロ&ナルスジャックの合作はかなり紹介されているが、単独作品はほとんど現在入手できない昨今。どこかまとめて翻訳してくれるところはないのだろうか。ポール・アルテだけではない。フランス本格ミステリをぜひもっと味わってみたいものだ。
- 関連記事
-
-
ピエール・ボアロー『死のランデブー』(読売新聞社) 2016/07/17
-
ボワロ&ナルスジャック『青列車は13回停る』(ハヤカワミステリ) 2004/11/16
-
ボワロ&ナルスジャック『大密室』(晶文社) 2004/05/08
-
ボワロ&ナルスジャック『思い乱れて』(創元推理文庫) 2004/04/01
-
ボワロ&ナルスジャック『技師は数字を愛しすぎた』(創元推理文庫) 2004/03/25
-