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リチャード・ニーリィ『オイディプスの報酬』(角川文庫)
先週末から鼻水が止まらないうえに目もしょぼしょぼ。おまけに頭もずきずきして、まったく仕事が手につかない。急に冷え込んだこともあり、てっきり風邪だと思っていたが、これってやはり花粉症なのかもしれない。なんだか去年も似たようなことを日記に書いた気もするが、とにかく辛い。
本日の読了本はリチャード・ニーリィの『オイディプスの報酬』。
長らく絶版だった角川のニーリィ作品が、一挙に三作すべて文庫で復刊されたときはちょっとした衝撃だった。ただ、個人的には新潮文庫の『仮面の情事』、ポケミスの『日本で別れた女』がまずまずといった感じだったので、傑作と名高い角川の三冊がどれほどのものか確かめたかったというのが大きい。
こんな話。ベトナム帰りでヒッピー崩れの主人公ジョニーは、憎き父親から大金を騙し取るべくひさびさに故郷に帰ってきた。ところが計画はいったん挫折したものの、父の後妻ルシルと関係を結んだジョニーは、二人でさらなる計画を企てることにする。今度の計画はスムーズに運んだかに見えたが、予想もしない事態が勃発し、二人は運命の急流に呑み込まれてゆく……。
何ともはやオフビートなクライムノベル。主人公のジョニー同様、読者も先を読めない展開というか、リーダビリティはかなり高い。結末自体はなんとなく想像がついたが、殺人が起こるあたりから終盤までの展開は一気読み。
ディーヴァーらに代表されるいわゆるジェットコースターノベルが、息をもつかせぬスピード感で勝負するなら、こちらは読者を酩酊させるコーヒーカップノベル(つまらん喩えですまん)であり、そのドライヴ感は見事。かなりいい感じで酔わせてくれる。
登場人物の造型もいい。ひと癖もふた癖もある連中ばかりで、主人公からしてほとんどの読者が感情移入できないはず。一番まともそうに思えるのは捜査に当たる刑事くらいだが、彼すら心の底では何を考えているのか判然としない。これらの際だったキャラクターなればこそ、先のストーリーもますます活きるわけである。
ただ、強いて難をあげるとすれば、当時ではかなり衝撃的だったと思われる本作のどんでん返しも、刺激の強い作品を読み慣れた現代の読者にはそれほどのものと思われないかもしれない。本書の発表年は1972年。リアルタイムで読みたかった一冊ではある。
本日の読了本はリチャード・ニーリィの『オイディプスの報酬』。
長らく絶版だった角川のニーリィ作品が、一挙に三作すべて文庫で復刊されたときはちょっとした衝撃だった。ただ、個人的には新潮文庫の『仮面の情事』、ポケミスの『日本で別れた女』がまずまずといった感じだったので、傑作と名高い角川の三冊がどれほどのものか確かめたかったというのが大きい。
こんな話。ベトナム帰りでヒッピー崩れの主人公ジョニーは、憎き父親から大金を騙し取るべくひさびさに故郷に帰ってきた。ところが計画はいったん挫折したものの、父の後妻ルシルと関係を結んだジョニーは、二人でさらなる計画を企てることにする。今度の計画はスムーズに運んだかに見えたが、予想もしない事態が勃発し、二人は運命の急流に呑み込まれてゆく……。
何ともはやオフビートなクライムノベル。主人公のジョニー同様、読者も先を読めない展開というか、リーダビリティはかなり高い。結末自体はなんとなく想像がついたが、殺人が起こるあたりから終盤までの展開は一気読み。
ディーヴァーらに代表されるいわゆるジェットコースターノベルが、息をもつかせぬスピード感で勝負するなら、こちらは読者を酩酊させるコーヒーカップノベル(つまらん喩えですまん)であり、そのドライヴ感は見事。かなりいい感じで酔わせてくれる。
登場人物の造型もいい。ひと癖もふた癖もある連中ばかりで、主人公からしてほとんどの読者が感情移入できないはず。一番まともそうに思えるのは捜査に当たる刑事くらいだが、彼すら心の底では何を考えているのか判然としない。これらの際だったキャラクターなればこそ、先のストーリーもますます活きるわけである。
ただ、強いて難をあげるとすれば、当時ではかなり衝撃的だったと思われる本作のどんでん返しも、刺激の強い作品を読み慣れた現代の読者にはそれほどのものと思われないかもしれない。本書の発表年は1972年。リアルタイムで読みたかった一冊ではある。
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