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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ボワロ&ナルスジャック『思い乱れて』(創元推理文庫)

 このところのマイブーム、ボワロ&ナルスジャック。本日は創元推理文庫から『思い乱れて』を読了。

 シャンソン界の大御所的存在、フォジェール夫妻。夫のモーリスは作詞作曲家として、妻のエヴは歌手として、人気実力とも絶頂にあった。しかしながら、夫婦仲はとっくの昔に冷え切っており、エヴには年下のピアニスト、ルプラという愛人がいた。そして三角関係のもつれからルプラはモーリスを撲殺してしまい、二人は事故として偽装することにする。その偽装が成功したかに見えた矢先、エブの下に一枚のレコードが配達された。それはモーリスからのメッセージが録音された不気味なレコードであった。

 謎の興味は、モーリスの声を録音したレコードを誰が送っているのか、どうやって偽装を知ったのか、という点に絞られている。しかし登場人物も少ないことからほぼ展開は読めてしまい、本来なら本書の肝であるはずのサスペンスがもうひとつ弱いのは残念。
 ただ、レコードを使った死者からのメッセージというのは雰囲気作りとしては悪くない。また、愛し合っていたはずのエヴとルプラが不安におののいて次第に心離れていく様や心理は濃厚に語られ、このあたりはボワロ&ナルスジャックの真骨頂という感じで、好きな人には堪えられないところだろう。
 正直、先日読んだ『仮面の男』『技師は数字を愛しすぎた』よりは落ちるが、軽い心理サスペンスが好きな人ならいい暇つぶしにはなるだろう。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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