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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ギルバート・アデア『閉じた本』(東京創元社)

 正月明けからこっち、土曜はずっと出勤している気がする。本日も社内のレイアウト変更で出勤なり。言い出しっぺなので休むわけにもいかんしなぁ。自分へのご褒美に夜は行きつけの料理屋へ。牡蠣、白子、鮃、鯛、厚揚げなどをつまみに日本酒を味わう。ううー、極楽じゃ。

 イギリスの文学・映画評論家でもあるギルバート・アデアが書いたミステリ『閉じた本』。
 本業がミステリでない作家、特に文学畑の作家が著した作品というのは、いろいろな文学的企みに充ち満ちた場合が多い。それはそれで楽しみなのだが、下手をすると虻蜂取らずになることも多く、失敗作もしばしば見受けられる。本書でも著者のアデアはなかなか面白い試みを企てているが、果たしてその成果はいかに?

 主人公は小説家のポール。ブッカー賞をも受賞し売れっ子だった彼は、あるとき交通事故で顔にひどいヤケドを負い、視力まで失ってしまう。外に出ることを恐れた彼は隠遁生活を送るが、次第に創作意欲に目覚め、口述筆記で作品を書こうと思い立つ。
 新聞の募集で応募してきた青年の名は、ジョン・ライダーと名乗った。ジョンはポールの代わりに世間を観察し、二人は順調に口述筆記を進めていく。しかし何かがおかしかった。ポールは過ぎゆく日々のなかで、次第にジョンに対して不信感をつのらせてゆく……。

 本書では主人公を盲人に設定し、読者が彼と同じ情報しか共有できないよう工夫しているのがミソであろう。つまり情報として入ってくるのは、主人公が耳にできる会話や物音、そして主人公が考える独白文だけなのである。ミステリで盲目の主人公というと、かのマックス・カラドスを初めとして、デイヴィッド・ローンの書いた音響技師ハーレック、ブリジット・オベールのエリーズものなどが思い浮かぶが、それらはすべてシリーズものなので、鋭い聴覚や知力で勝負する主人公たちというイメージが強い。
 しかし、本作は目が見えないという状況を追求した心理サスペンスであり、その意味ではジョンの不審な行動が明らかになる中盤過ぎまではまずまず緊張感を持たせることに成功している。
 これでフィニッシュがよければいいのだが、残念ながらジョンの狙い、動機、オチのつけかた等はかなり失速気味。ジョンの正体が明らかになる場面も唐突だし、エンターテインメントとしてはイマイチと言えるだろう。残念ながら企画倒れの一冊。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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