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メアリ・ロバーツ・ラインハート『黄色の間』(ハヤカワミステリ)
ちょっとした用事があって、府中から聖蹟桜ヶ丘から百草園、高幡不動あたりを車で巡る。ついでに高幡不動でお参りしたが、多摩は土方歳三の出身地ということもあって、さながら新撰組祭り。ううむ、やはり大河ドラマになると扱いが変わりますな。
メアリ・ロバーツ・ラインハートの『黄色の間』読了。うう、これは辛かった。いわゆるHIBK派とコージーは基本的に体質が合わないので普通だったら対象外なのだが。ラインハートだけはミステリの歴史に確固たる足跡を残したHIBK派の大御所だし、それほど翻訳が出ているわけでもないので、つい手にとってしまうんだよなぁ。そしていつも後悔する。
もしご存じない人がいるとあれなので、ちょっとHIBK派というのを説明しておくと、これは「もし知っていたら……は避けられたのに」という語りを入れることで、読者に迫る恐怖を予め匂わせ、サスペンスを盛り上げるという手法である。今ではこのスタイル自体時代がかかりすぎていてシラケてしまうし、当時でも多用すると御都合主義に陥りやすいという欠点も含んでいたのだ。
ところで本作を読んで、なぜラインハートが自分に合わないか再確認できたのだが、特にHIBK派がダメというわけではないようだ。それよりも場面に応じて視点が変わりすぎることに問題があるような気がする。
例えば純粋に主人公の視点で物語を進めたり、あくまで客観的に三人称で進めてくれればよいのだが、場面ごとに一定の登場人物に感情移入するように書かれ、あまつさえ心理描写まで入れるものだから、すっかりこいつは犯人ではないことがわかってしまうのである。これではサスペンスも何もあったものではない。さらには鍵を握る人物のほとんどが隠し事をしており、そういう場合に限って心理描写もないので、読んでいてイライラすることおびただしい。
実は本作で語られる真相は、決して単純ではない。っていうか、かなり複雑な状況なのであるが、手がかりを隠して隠して、一気にどばっと終盤でぶちまけられるものだから、もう何でもいいやって気になってしまう。伏線などは一応あるし、それなりに意外な真相なのだけどね。主人公だと思っていたヒロインですら隠し事をするし、読者は本当に流れにまかせて、ただ傍観するしかない感じなのだ。
ラインハートは日本ではさっぱり人気のない作家だが、アメリカでは未だに根強いファンもいると聞く。その魅力の秘密を本当に知りたい。いや、マジで。クラシックは大好きだし、かなり温かい目で見ているつもりなのだが、これだけはだめだ。すまん。
メアリ・ロバーツ・ラインハートの『黄色の間』読了。うう、これは辛かった。いわゆるHIBK派とコージーは基本的に体質が合わないので普通だったら対象外なのだが。ラインハートだけはミステリの歴史に確固たる足跡を残したHIBK派の大御所だし、それほど翻訳が出ているわけでもないので、つい手にとってしまうんだよなぁ。そしていつも後悔する。
もしご存じない人がいるとあれなので、ちょっとHIBK派というのを説明しておくと、これは「もし知っていたら……は避けられたのに」という語りを入れることで、読者に迫る恐怖を予め匂わせ、サスペンスを盛り上げるという手法である。今ではこのスタイル自体時代がかかりすぎていてシラケてしまうし、当時でも多用すると御都合主義に陥りやすいという欠点も含んでいたのだ。
ところで本作を読んで、なぜラインハートが自分に合わないか再確認できたのだが、特にHIBK派がダメというわけではないようだ。それよりも場面に応じて視点が変わりすぎることに問題があるような気がする。
例えば純粋に主人公の視点で物語を進めたり、あくまで客観的に三人称で進めてくれればよいのだが、場面ごとに一定の登場人物に感情移入するように書かれ、あまつさえ心理描写まで入れるものだから、すっかりこいつは犯人ではないことがわかってしまうのである。これではサスペンスも何もあったものではない。さらには鍵を握る人物のほとんどが隠し事をしており、そういう場合に限って心理描写もないので、読んでいてイライラすることおびただしい。
実は本作で語られる真相は、決して単純ではない。っていうか、かなり複雑な状況なのであるが、手がかりを隠して隠して、一気にどばっと終盤でぶちまけられるものだから、もう何でもいいやって気になってしまう。伏線などは一応あるし、それなりに意外な真相なのだけどね。主人公だと思っていたヒロインですら隠し事をするし、読者は本当に流れにまかせて、ただ傍観するしかない感じなのだ。
ラインハートは日本ではさっぱり人気のない作家だが、アメリカでは未だに根強いファンもいると聞く。その魅力の秘密を本当に知りたい。いや、マジで。クラシックは大好きだし、かなり温かい目で見ているつもりなのだが、これだけはだめだ。すまん。
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