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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


アントニイ・バークリー『ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎』(晶文社)

 もはやどれをとってもハズレなしといえるアントニイ・バークリーの作品群。本日読了した『ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎』も十分楽しめる佳作である。

 ストーリーは複雑ではなく、また、実はそれほど魅力的といえるほどのものでもない。崖から転落したヴェイン夫人の死をめぐり、ご存じシェリンガムとスコットランド・ヤードのモーズビー警部が推理合戦を繰り広げるという展開だ。
 解説でも触れられているように、本書は探偵小説論ともいえる探偵小説であり、シェリンガムとモーズビー警部の知的勝負がそのまま探偵小説の可能性や在り方について考えさせられる内容となっている。これがまたバークリー特有のやや皮肉な見方で描かれているので、すれた探偵小説ファンにはたまらなく楽しめるわけである。

 したがって本書を心から楽しむには、ある程度探偵小説を系統立てて読んでいたり、それなりの探偵小説的教養を身につけておくに越したことはない。その上で書かれた時代を考慮して読む必要があるだろう。うーむ、こちらがバークリーファンなので、どうしても評価が甘くなりがちだが、楽しめることは間違いないはず。オススメです。

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Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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