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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


浜尾四郎『殺人小説集』(桃源社)

 浜尾四郎の唯一の短編集『殺人小説集』読了。浜尾四郎の短編を読もうと思ったら、創元推理文庫版が現役なので一番手っ取り早いが、収録数でいったら(古書にはなるけれど)やはりこの桃源社版か全集ということになるだろう。ただ、全集は哀しいかな高い。こっちだって安くはないけど、浜尾四郎の作品を気に入ったのなら買っておいて損はない。
※現在は沖積社が復刻版を出しており、入手は容易になったようだ

「彼が殺したか」
「死者の権利」
「悪魔の弟子」
「殺された天一坊」
「島原絵巻」
「正義」
「探偵小説作家の死」
「黄昏の告白」
「夢の殺人」
「彼は誰を殺したか」
「有り得る場合」
「肉親の殺人」
「マダムの殺人」
「不幸な人達」
「救助の権利」

 収録作は以上。
 元検事という経歴が色濃く表れ、法律や裁判の在り方などを問う、言わば社会派といった作品が多い。まあ、社会派とはいっても松本清張以後のそれとは雰囲気が違う。当時はともかく現在これらの作品を読んで「法律とはいったい何なのだ?」などと考える人もあまりおらんだろう(いたらゴメン)。
 浜尾四郎の作品を楽しむなら、やはりそういう読み方よりは数少ない戦前本格作家の妙技を素直に楽しんだ方が良い気がする。「殺された天一坊」などは大岡越前ものというかなりの異色作で、アンソロジーなどにもよく採られており、この作家の意外な面も見ることができる。あ、でも大岡越前だって一種の法律ものかぁ(笑)。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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