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海野十三『海野十三敗戦日記』(講談社)
『赤道南下』を読んだ影響で、『海野十三敗戦日記』もすぐに読んでおかねばという気になる。
『赤道南下』は開戦2年目に書かれたこともあり、まだまだ物資も豊富な時期であり、国全体がイケイケの状態である。書かれた内容も国策に沿ったものという印象は拭えない。
しかし、『海野十三敗戦日記』は終戦の直前から終戦にかけて書かれたものであり、しかも空襲のど真ん中にあっての日記だ。いかに愛国者の海野といえども、毎日のように飛来する爆撃機を見てそこまで楽観はできないはずだが、それでも彼の希望の火はなかなか消えない。
これを信念を持つ人間の素晴らしさと見るか、それとも洗脳教育の恐ろしさと見るか。その結果はともかくとして、当時に正しい判定が下せるかどうかとなると、自分だって全然自信がない。それどころか今の日本にしたって右にならえの風潮は決して弱まってはいないわけで、もしかすると当時よりひどいものがあるかもしれない。現代はさまざまな価値観がある時代とも言われるが、そのくせ人と違うことを恐れる傾向は強い。日本人ならではの特質と言われることも多いが、自分も含めて何とも歯がゆいかぎりだ。
なんだか『海野十三敗戦日記』の感想とはずれてきたな。元に戻そう。
本書でもっとも興味をかきたてられるのは、不謹慎ではあるが、やはり海野が一家心中を考えるところである。そしてその決意を妻に伝えると、妻はすでに子どもたちにもその旨を教えており、しかも子どもたちも了解済みという。なんとも壮絶。
海野の主義はともかくとして、家長として彼が考え行動する姿勢はおいそれと真似できるものではない。もともと彼はただの憂国の徒ではなく、正義の人なのである。真面目すぎるというのは簡単だが、ただそれだけではない資質というものもあるように思う。それが敗戦を迎えたときピークに達したのだ。人間海野を考えるとき、忘れてはならないエピソードであり、その資質が作品に与えていたであろう影響を考えずにはいられない。
ううむ、なんだかとりとめのない感想になってしまった。
『赤道南下』は開戦2年目に書かれたこともあり、まだまだ物資も豊富な時期であり、国全体がイケイケの状態である。書かれた内容も国策に沿ったものという印象は拭えない。
しかし、『海野十三敗戦日記』は終戦の直前から終戦にかけて書かれたものであり、しかも空襲のど真ん中にあっての日記だ。いかに愛国者の海野といえども、毎日のように飛来する爆撃機を見てそこまで楽観はできないはずだが、それでも彼の希望の火はなかなか消えない。
これを信念を持つ人間の素晴らしさと見るか、それとも洗脳教育の恐ろしさと見るか。その結果はともかくとして、当時に正しい判定が下せるかどうかとなると、自分だって全然自信がない。それどころか今の日本にしたって右にならえの風潮は決して弱まってはいないわけで、もしかすると当時よりひどいものがあるかもしれない。現代はさまざまな価値観がある時代とも言われるが、そのくせ人と違うことを恐れる傾向は強い。日本人ならではの特質と言われることも多いが、自分も含めて何とも歯がゆいかぎりだ。
なんだか『海野十三敗戦日記』の感想とはずれてきたな。元に戻そう。
本書でもっとも興味をかきたてられるのは、不謹慎ではあるが、やはり海野が一家心中を考えるところである。そしてその決意を妻に伝えると、妻はすでに子どもたちにもその旨を教えており、しかも子どもたちも了解済みという。なんとも壮絶。
海野の主義はともかくとして、家長として彼が考え行動する姿勢はおいそれと真似できるものではない。もともと彼はただの憂国の徒ではなく、正義の人なのである。真面目すぎるというのは簡単だが、ただそれだけではない資質というものもあるように思う。それが敗戦を迎えたときピークに達したのだ。人間海野を考えるとき、忘れてはならないエピソードであり、その資質が作品に与えていたであろう影響を考えずにはいられない。
ううむ、なんだかとりとめのない感想になってしまった。
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