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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ジョン・ロード『プレード街の殺人』(ハヤカワミステリ)

 神保町交叉点で古本青空市用の土台を組み始めているようだ。来週はいよいよ古本祭りか。でも相変わらずといえば相変わらずだが、仕事がけっこう立て込んでいて、果たして見て回る余裕があるかどうか。

 ミステリ黄金期を代表する作家として有名なジョン・ロード。しかし日本ではもうひとつ評価が低く、百冊以上の作品があるというのに邦訳で読める作品はほとんどなく、現在でも容易に入手できるのは『プレード街の殺人』(ハヤカワミステリ)と『見えない凶器』(国書刊行会)ぐらいのものであろう。
 本日の読了本はその数少ない邦訳の中から『プレード街の殺人』。

 突如、プレード街を襲った連続殺人事件。そのひとつひとつは一見、何の関連性もないように思えたが、ただ一つ共通していたのは、被害者が受け取った殺人を予告するカードだった。しかし、それ以外に何の手がかりもなく、また一人、そしてまた一人、被害者が倒れていった……。

(ネタバレあり)
 連続殺人の隠されたつながりを探すという、いわゆるミッシング・リンクもの。クリスティの『ABC殺人事件』やデアンドリアの『ホッグ連続殺人』が有名だが、個人的にこのテーマが好きなこともあって比較的楽しめた。ただし、出来自体は微妙である。

 巧いのは構成だろう。中盤までは被害者の周辺や、一種、狂言回しにも思える煙草屋と薬草屋というお隣さん同士のやりとりが中心となって進められ、探偵や警察の捜査はほとんど語られない。
 ところが後半に入って探偵が登場するや、物語は大きなうねりを見せ、探偵対犯人という構図をはっきりと提示してくるのである。しかし、そこに物語の破綻といったものはなく、いいレベルでのサスペンスを持続しているように感じられた。特に煙草屋と薬草屋の使い方は見事。また、犯人の動機が現代でも十分に通用するもので、その動機があればこそ本書が成立する要因にもなっており、説得力が非常に高い。

 惜しむらくは、本格作品というにはその要素が意外なほど希薄であるということ。極端なことをいえば『そして誰もいなくなった』みたいなものといえばよいか。一応、本格としての体裁はとっているが、真っ向から推理や論理する作品ではないということだ。
 だが、『そして誰もいなくなった』が最後に強烈なオチをもってくるのに対し、本書は謎解きが後半でなしくずし的に明らかにされ、大変もったいない。まあ、作者の方でそのように読まれることを拒否しているような感もあるので、それは狙いだったのかもしれない。実際、作中でも探偵役のプリーストレイ博士はあまり鋭さを見せず、どちらかといえば迷える羊の一人として描かれ、あまつさえミッシング・リンクの一部と化している。

 事件や背景が魅力的なだけに、これにアッと驚く謎解きを加えておけば大傑作になっただろうに。そう思わせる一冊。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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