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ヘンリー・ウエイド『警察官よ汝を守れ』(国書刊行会)
本日の読了本はヘンリー・ウエイドの『警察官よ汝を守れ』。
ブロドシャー州の警察本部長スコール大尉は元服役囚アルバート・ハインドに脅かされていた。それは20年前、密漁事件の絡みで森番ラブが死んだことが原因だった。ラブは事故死であったにもかかわらず、スコール大尉はその場に居合わせた密猟者ハインドを他の密猟者への見せしめとして殺人罪で逮捕したのである。
そのハインドが刑期を終えて出所した直後から、スコール大尉はハインドからの脅迫を受け始める。しかし警察全体が警戒を強めた矢先、スコール大尉はこともあろうに警察本部の執務室で射殺されてしまう……。
幕開けこそはそれなりに派手だが、基本は絵に描いたような手堅い英国ミステリ。
けれん味は少ないし、探偵役もいたって地味。探偵役のプールは地道に試行錯誤を繰り返しながら、少しづつ捜査を進めてゆく。試行錯誤というとコリン・デクスターのモース警部が有名だが、あの手の論理のアクロバット的なところはほとんどない。読者にもすべての情報を与えるため、その過程はフェアであると同時に少し正直すぎて、おそらく若い頃なら絶対に途中で飽きるタイプの作品である。実際、古典復刻ブームの現在でも、それほど評価されるとは思えない。
しかし個人的には、本格であろうとハードボイルドであろうと、今ではこういうタイプの方が逆に楽しめるのは不思議。特に警察内部の微妙な人間関係が織りなすドラマは本作の肝であると思う。しっかり読んでいれば犯人も見当がつきやすく、驚きは少ないものの、終盤の味わいは見事だ。世間的な評価は低いのかもしれないが、私は気に入った。
ブロドシャー州の警察本部長スコール大尉は元服役囚アルバート・ハインドに脅かされていた。それは20年前、密漁事件の絡みで森番ラブが死んだことが原因だった。ラブは事故死であったにもかかわらず、スコール大尉はその場に居合わせた密猟者ハインドを他の密猟者への見せしめとして殺人罪で逮捕したのである。
そのハインドが刑期を終えて出所した直後から、スコール大尉はハインドからの脅迫を受け始める。しかし警察全体が警戒を強めた矢先、スコール大尉はこともあろうに警察本部の執務室で射殺されてしまう……。
幕開けこそはそれなりに派手だが、基本は絵に描いたような手堅い英国ミステリ。
けれん味は少ないし、探偵役もいたって地味。探偵役のプールは地道に試行錯誤を繰り返しながら、少しづつ捜査を進めてゆく。試行錯誤というとコリン・デクスターのモース警部が有名だが、あの手の論理のアクロバット的なところはほとんどない。読者にもすべての情報を与えるため、その過程はフェアであると同時に少し正直すぎて、おそらく若い頃なら絶対に途中で飽きるタイプの作品である。実際、古典復刻ブームの現在でも、それほど評価されるとは思えない。
しかし個人的には、本格であろうとハードボイルドであろうと、今ではこういうタイプの方が逆に楽しめるのは不思議。特に警察内部の微妙な人間関係が織りなすドラマは本作の肝であると思う。しっかり読んでいれば犯人も見当がつきやすく、驚きは少ないものの、終盤の味わいは見事だ。世間的な評価は低いのかもしれないが、私は気に入った。
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