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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


直井明『海外ミステリ誤訳の事情』(原書房)

 直井明氏といえば、エド・マクベインの研究家として知られた人物だが、その直井氏の新作はなんと誤訳についてのエッセイ集。それが『海外ミステリ誤訳の事情』だ。

 とにかく面白い。今の翻訳ミステリにいかに誤訳が多いのか唖然とするばかりだが、それほど罪がないものというか、本筋に影響を与えないものを中心にピックアップしているせいか、読み物として実に楽しいのである。訳文を読んでこれは怪しいとにらむ勘の鋭さ、その誤訳の原因を探り、正しい訳にたどり着くまでの過程が、さながらミステリを読むようである。
 もちろん翻訳者にしてみれば嫌な本であることは間違いないだろうが、著者は真っ向から非難するようなことはせず、タイトルや著者名、訳者名は隠すなど、配慮もしている。そもそも著者の膨大な知識量なくしては、普通は誤訳と気づくことすら難しいのではないか。私なんてまったくわかりません。

 個人的に興味深かったのは、超訳に触れている部分。直井氏は噴飯ものの超訳ですら切り捨てることをせず、ちゃんと比較分析して超訳の意義をも認め、児童向けのリライト版との共通性を挙げていたりするところがさすがである。
 ないものねだりをさせてもらうなら、結末すらひっくり返るような、致命的な誤訳例なども紹介してくれると、さらに楽しめたと思うが、まあ、これはさすがに危険すぎるか(笑)。


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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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