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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

長田順行/編『ワンダー暗号ランド』(講談社文庫)

 本日の読了本は長田順行氏の編纂による『ワンダー暗号ランド』。暗号をテーマにしたミステリのアンソロジーである。
 まずは収録作から。

甲賀三郎「琥珀のパイプ」
斎藤栄「三色の告発」
泡坂妻夫「掘出された童話」
樹下太郎「貨車引込線」
佐野洋「あるエイプリル・フール」
幾瀬勝彬「死句発句」
戸板康二「立女形失踪事件」
木々高太郎「詩と暗号」
江戸川乱歩「黒手組」
小栗虫太郎「源内焼六術和尚」

 暗号とミステリは一見相性が良さそうだが、これだけの暗号小説をまとめて読んでみると意外にそうでもないのかな、というのが第一印象。昔から言われるように、謎を論理的に解くところに本格探偵小説の肝があるのだとしたら、暗号を解くという行為はまさにぴったりのはず。
 だがこれも昔から言われることだが、それを突き詰めてしまうと、小説ではなくパズルを解いていればよいということになってしまう。

 そこで重要になるのが、小説としても面白く、謎解きとしても優れているという、絶妙なバランスである。
 とりわけ暗号をテーマにした場合、普通の本格ミステリよりさらにその度合いが要求されるべきだ。でないと本当に暗号パズルで終わってしまう。少なくとも私はパズルを解きたいためにミステリを読むわけではないので、いくら暗号自体が魅力的でもそれだけではつまらない。その暗号を解く過程や暗号が使われる状況なども説得力をもつものにしてほしいし、事件そのものも魅力的であってほしい。まあ、要は小説として面白ければいいのである。

 そういう観点で本書を読んだ場合、泡坂妻夫の「掘出された童話」は暗号を使いつつも作品を覆う叙情的な雰囲気がよく、本書中のベストではないかと思う。
 また、こういうものも書くのかとびっくりしたのが幾瀬勝彬の「死句発句」。この渋さは悪くなく、惹かれるものがある。
 ちなみに甲賀三郎「琥珀のパイプ」、木々高太郎「詩と暗号」、江戸川乱歩「黒手組」などは今までに何度も読んでいるし、個人的に別格扱い。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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