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小酒井不木『犯罪文学研究』(国書刊行会)
小酒井不木は創作に入る以前から、「新青年」などに寄稿していたバリバリの犯罪文学愛好者だった。元々は専門分野である医学関係のエッセイをいくつか書いていたらしいが、犯罪学に興味を持ち歴史や文学にも造詣の深い不木の原稿は、ただの医学エッセイとは異なり、犯罪文学愛好者の目をも引いたらしい。やがてそれが当時の新青年編集長である森下雨村の目にとまり、本格的に文筆の道へ進んでいくことになる。時代的にもまだ江戸川乱歩や横溝正史登場以前のことであり、不木の果たした役割は実に大きかったと言えるだろう。
本日の読了本『犯罪文学研究』は、そんな犯罪や探偵小説に関する当時のエッセイなどをまとめたものである。
まずは井原西鶴の 「桜陰比事」、それに倣って書かれた「鎌倉比事」 や「藤陰比事」。これらは現代で言うところの法廷ミステリだ。 あるいは滝沢馬琴 の「青砥藤綱模稜案」 、さらには近松とシェークスピアにおける殺人比較論、パリ警視庁のヴィドック探偵の冒険譚など、とにかく凄まじいばかりの幅広さ。これが昭和初期に書かれたのであるから、不木の恐るべき教養がうかがえる。おそらく当時の犯罪文学愛好者はこぞって読んだはずである。そして不木に触発され、探偵小説のブームを作り上げていったのだろう。とにかく今読んでもためになる魅力的な一冊である。
本日の読了本『犯罪文学研究』は、そんな犯罪や探偵小説に関する当時のエッセイなどをまとめたものである。
まずは井原西鶴の 「桜陰比事」、それに倣って書かれた「鎌倉比事」 や「藤陰比事」。これらは現代で言うところの法廷ミステリだ。 あるいは滝沢馬琴 の「青砥藤綱模稜案」 、さらには近松とシェークスピアにおける殺人比較論、パリ警視庁のヴィドック探偵の冒険譚など、とにかく凄まじいばかりの幅広さ。これが昭和初期に書かれたのであるから、不木の恐るべき教養がうかがえる。おそらく当時の犯罪文学愛好者はこぞって読んだはずである。そして不木に触発され、探偵小説のブームを作り上げていったのだろう。とにかく今読んでもためになる魅力的な一冊である。
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