- Date: Sun 06 07 2003
- Category: 国内作家 島田一男
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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島田一男『古墳殺人事件』(徳間文庫)
続けて島田一男をもういっちょ。ものは『古墳殺人事件』。
こちらは著者の長篇第一作で、テイストは『錦絵殺人事件』同様、ペダンティズム溢れるバリバリの本格。探偵役も同じく少年タイムスの編集長、津田皓三。
物語はその津田の元に旧友の考古学者・曽根辞郎の訃報が届くところから幕を開ける。曽根は多摩の古墳群を発掘調査していたが、その古墳の中で頭部を殴打されて殺されていたのだ。曽根の遺した謎の詩、船を模した奇妙な館。衒学趣味もあいまって、まさに日本のファイロ・ヴァンス模倣探偵譚といえる作品。
その借り物的文体から坂口安吾に酷評された作品でもあるが、安吾が何をミステリに求めていたのかは知らないが、まあ、そこまでいう出来ではない。確かに機械的トリックなどはイマイチだし、主人公の津田ももうひとつ魅力不足。島田一男自身の作品と比べても、次作の『錦絵殺人事件』の方が上でしょう。ただ、系統立てて日本の探偵小説史を語る際には(いつそういう状況があるのかは知らんが)欠かすことができないので、本格探偵小説ファンは読んでおいても損はない。
ちなみに島田一男はこの苦悩の時期を乗り越え、後に独自の文体と作風を生みだし、人気作家となったのはご承知のとおり。それを思えば安吾の酷評もそれなりに意味のあることだったのかも。
こちらは著者の長篇第一作で、テイストは『錦絵殺人事件』同様、ペダンティズム溢れるバリバリの本格。探偵役も同じく少年タイムスの編集長、津田皓三。
物語はその津田の元に旧友の考古学者・曽根辞郎の訃報が届くところから幕を開ける。曽根は多摩の古墳群を発掘調査していたが、その古墳の中で頭部を殴打されて殺されていたのだ。曽根の遺した謎の詩、船を模した奇妙な館。衒学趣味もあいまって、まさに日本のファイロ・ヴァンス模倣探偵譚といえる作品。
その借り物的文体から坂口安吾に酷評された作品でもあるが、安吾が何をミステリに求めていたのかは知らないが、まあ、そこまでいう出来ではない。確かに機械的トリックなどはイマイチだし、主人公の津田ももうひとつ魅力不足。島田一男自身の作品と比べても、次作の『錦絵殺人事件』の方が上でしょう。ただ、系統立てて日本の探偵小説史を語る際には(いつそういう状況があるのかは知らんが)欠かすことができないので、本格探偵小説ファンは読んでおいても損はない。
ちなみに島田一男はこの苦悩の時期を乗り越え、後に独自の文体と作風を生みだし、人気作家となったのはご承知のとおり。それを思えば安吾の酷評もそれなりに意味のあることだったのかも。
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