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小酒井不木『人工心臓』(国書刊行会)
雨が降ったり止んだり、さすが梅雨です。どうでもいいことだが、私は傘を持つのがとてつもなく嫌いで、ましてや雨が降ってもいないのに、用心のために傘を持って家を出ることなど考えたこともない。しかし、そのくせ濡れるのは嫌なので、勢い外出先で雨にたたられると、しぶしぶ傘を買う羽目になる。そんなわけで自然、安物傘だけは増えてしまい、愚かにも今週はすでに2本も購入済みである。これで会社には6本、自宅には3本か……ぐふ。
そんな梅雨にこそお勧めしたいのが、昭和初期の国産探偵小説。このどんよりとした天気でこそ、当時、不健全派と呼ばれた変格探偵小説がぴったりとマッチする。本日の読了本は、その大将格ともいうべき小酒井不木、ものは『人工心臓』である。収録作はこんなところ。
「犬神」
「恋愛曲線」
「人工心臓」
「外務大臣の死」
「安死術」
「死の接吻」
「メヂューサの首」
「新案探偵法」
「稀有の犯罪」
「二重人格者」
「闘争」
「「二銭銅貨」を読む」
「「心理試験」序」「国枝史郎氏の人物と作品」
「歴史的探偵小説の興味」
「ポオとルヴェル」
「ヂュパンとカリング」
「「マリー・ロオジェ事件」の研究」
「恐ろしき贈物」
「誤った鑑定」
「怪談綺談」
「変な恋」
「体格検査」
「被尾行者」
実は不木の作品をこうしてまとめて読んだのは初めてなのだが、予想以上に読みどころは多く、今読んでも十分堪能できる作品揃いであった。まず、医学という他の作家にはない武器を持ち、そこから想像を飛躍させる設定の妙。そして皮肉なオチを効かせたブラックユーモア。さらに読みやすい文体。
トリックなどは弱いものの、ひとつひとつの短編がピンと張りつめており、ある意味心理小説としても読み応えがあるといえるだろう。特に「人工心臓」や「恋愛曲線」、「メヂユーサの首」あたりは、アンソロジーなどにもよく採り上げられるだけのことはあり、絶妙なバランスのうえに成り立っている作品である。
他の昭和初期の作家に比べて決して遜色ないと思うのだが、あまり復刊されないのは何故だろう。一冊読んだだけなのであくまで思いつき程度でしかないのだが、それは変格でありながら、乱歩や横溝ほどの毒やアクが感じられないことにあるのではないか。また、意外なほど読みやすい文章も、かえって災いしているようにも思う。
もちろん個人的には○なので、その他の作品も引き続き読んでみようと思う。いや、これだから探偵小説は止められないのだな。
そんな梅雨にこそお勧めしたいのが、昭和初期の国産探偵小説。このどんよりとした天気でこそ、当時、不健全派と呼ばれた変格探偵小説がぴったりとマッチする。本日の読了本は、その大将格ともいうべき小酒井不木、ものは『人工心臓』である。収録作はこんなところ。
「犬神」
「恋愛曲線」
「人工心臓」
「外務大臣の死」
「安死術」
「死の接吻」
「メヂューサの首」
「新案探偵法」
「稀有の犯罪」
「二重人格者」
「闘争」
「「二銭銅貨」を読む」
「「心理試験」序」「国枝史郎氏の人物と作品」
「歴史的探偵小説の興味」
「ポオとルヴェル」
「ヂュパンとカリング」
「「マリー・ロオジェ事件」の研究」
「恐ろしき贈物」
「誤った鑑定」
「怪談綺談」
「変な恋」
「体格検査」
「被尾行者」
実は不木の作品をこうしてまとめて読んだのは初めてなのだが、予想以上に読みどころは多く、今読んでも十分堪能できる作品揃いであった。まず、医学という他の作家にはない武器を持ち、そこから想像を飛躍させる設定の妙。そして皮肉なオチを効かせたブラックユーモア。さらに読みやすい文体。
トリックなどは弱いものの、ひとつひとつの短編がピンと張りつめており、ある意味心理小説としても読み応えがあるといえるだろう。特に「人工心臓」や「恋愛曲線」、「メヂユーサの首」あたりは、アンソロジーなどにもよく採り上げられるだけのことはあり、絶妙なバランスのうえに成り立っている作品である。
他の昭和初期の作家に比べて決して遜色ないと思うのだが、あまり復刊されないのは何故だろう。一冊読んだだけなのであくまで思いつき程度でしかないのだが、それは変格でありながら、乱歩や横溝ほどの毒やアクが感じられないことにあるのではないか。また、意外なほど読みやすい文章も、かえって災いしているようにも思う。
もちろん個人的には○なので、その他の作品も引き続き読んでみようと思う。いや、これだから探偵小説は止められないのだな。
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